「いろんなことをやりたいの。広告って小さいことから大きいことまでできるから、広告かなって」

そう語るのは、株式会社電通第5‌CR局に所属する近藤雄介さんだ。近藤さんは、コピーライターとして日々働いている。近藤さんは、2‌0‌1‌5年に東京六大学野球慶早戦のポスターを作成した。「ビリギャルって言葉がお似合いよ、慶應さん。」「ハンカチ以来パッとしないわね、早稲田さん。」のコピーで話題となった。

「コピーライター」とはどんな仕事だろう。企業に依頼された企画に沿って、広告の「キャッチコピー」を考える仕事というイメージがあるかもしれない。しかし、近藤さんに言わせれば広く「課題を解決する仕事」である。企業が中から見た視点ではわからない、外からの視点を提供するのである。それゆえ、企画を最初に練って、後から言葉を考えるケースも多いという。

近藤さん自身も、慶早戦のポスターを考える際に、「早大と慶大で煽り合う」という枠組みを最初に考えた。そこから当時話題になっていた「ビリギャル」という言葉や、「世間が早慶生に抱いていそうなイメージ」を組み合わせてコピーを作ったそうだ。

また、一度に多数のクライアントとともに仕事をしている。担当の分野について一から勉強することもある。「日常生活と仕事が近いから、普段の生活からヒントを得ることがあるし、勉強したことがほかでも活かせる」

近藤さんは2‌0‌1‌4年に電通に入社した。慶大で文学部社会学専攻に所属し、應援指導部で活動をしていた。慶大を受験した理由は、高校時代に慶早戦を観て、應援指導部に一目惚れしたからだという。

「声を出してと言わずにどうやって声を出させるかとか、なにをしたら観客が応援に乗ってくれるかとか、常に考えていた。一言でたくさんの人々の心に働きかけて、反応をおこすのが楽しい。広告って『塾生注目』と同じだと思っています」

夜勤のアルバイトもこなし、ハードな大学生活を送ってきた。しかし、決してへこたれることはなかった。「高校と大学と、後悔はしたくなかったから。自分がこれ以上無理だって言い切れるかを、常に守ってきた」

慶早戦を盛り上げる立場にいたからこそ、ゼロから何かを作り上げることに夢中になれたのだという。「慶應って学問を学ぶ場所もあり、慶應だからこそ盛り上がれるイベントがたくさんあって、恵まれていると思う。行事を盛り上げる側になって、熱の発信源にいてほしい。大学生活は、主体性を発揮して失敗しても許される最後のチャンスだと思うから」

そんな近藤さんの今後の目標は、日本中がひとつになるような経験や、共通の話題を作り上げることだ。

「應援部に入ったからこそ味わえる、苦労した先の達成感を知った。今もその達成感を味わうために、クライアントさんと必死になって広告を作り上げています」

熱い眼差しを向けられ、確信した。近藤さんの挑戦は終わらないと。

(下村文乃)

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