【ART COLUMN】草間彌生美術館

本格的に冬が始まった寒空の下、新宿にある外苑東通を歩いていると、5階建ての白を基調とした、周囲とは趣を異にする建物が姿を現した。昨年10月に開館した、前衛芸術家の草間彌生さん設立の「草間彌生美術館」だ。記者は今回、この美術館を観覧した。観覧時は開館記念展「創造は孤高の営みだ、愛こそはまさに芸術への近づき」が開催中であった。

美術館2階では白のキャンバスに黒一色で描かれた絵たちが見られた。たくさんの目と顔の輪郭を中心として生み出された独創的な表現。同じ模様の繰り返しにしか見えない単調なものが、複雑性を帯びた、奇妙でまがまがしい感情を抱かせる。

無数の目は誰かに見られている様子を表しているのだろうか。草間さんは幼少期から幻覚や幻聴に悩まされていた。彼女にとっては、無数の視線に囲まれている日常がありのままの世界なのかもしれない。コンセプチュアルな強迫観念。つい他者の目を気にしながら生きてしまう私たちにも通ずるものがある。

3階のギャラリーには、2階とは対照的に色彩にあふれた世界が広がっていた。形式とは無縁の、自由で自発的な芸術群が記者の足をオートマティスムに立ち止まらせる。この階には未発表の新作も何点かある。高齢でありながらも創作意欲の衰えていない草間さんの様子が感じられ、ファンからすれば嬉しい限りであろう。

光り輝くかぼちゃたち

4階に行くと、水玉と同様に彼女の作品の大きなモチーフであるとされるかぼちゃの作品があった。タイトルは《無限の彼方へかぼちゃは愛を叫んでいく》。暗室に通されると、そこには徐々に光り輝いていくかぼちゃたち。不格好でありながらも懸命に成長しようとするかぼちゃたちは、慈しみのようなものを感じさせる。

本作品にはインスタレーションという表現手法が用いられている。合わせ鏡を上手く利用することで、見る者は光やオブジェが無限の広がりを持っているように感じる。空間全体が一つの作品となるため、鑑賞者は空間を作品として認知し、それを全身で味わうことができるのだ。

5階は資料室と屋上ギャラリーになっており、彼女のこれまでの活躍や新作のかぼちゃの立体作品を鑑賞することができる。

本美術館展示の作品はすべて草間さん自身がタイトルをつけている。その真意は本人以外には計り知れないが、記者が目をつけたのは彼女の作品名には、「愛」というワードが多いことだ。実際、彼女は芸術へ近づく鍵としても「愛」の存在をほのめかしている。芸術は表現する者だけでなく、鑑賞する者と感動を共にすることで初めて成立する。この媒介になるのが彼女の言う「愛」なのであろうか。彼女の芸術家としての信念を考えさせられる。

御年88歳でありながら現在でも精力的に活動を続けている草間さん。一昨年には文化勲章を受章し、現在でも前人未踏の挑戦を続けている。彼女は創造に対する純粋な気持ちをまだまだ保ち続けているのだ。そしてその証としての「草間彌生美術館」の開館。記者は帰り道には冬の寒さなど忘れていた。
(曽根智貴)