ART COLUMN

【ART COLUMN】エリック・カール展 The Art of Eric Carle

『はらぺこあおむし』『パパ、お月さまとって!』『だんまり こおろぎ』…ページをめくるたびに現れるのは、繊細な色遣いで描かれた、どこか懐かしい世界。幼いころ、母親に何度も読み聞かせをしてもらった覚えがある。大学生になって久しぶりに見返してみて、幼いころの純粋な気持ちを思い出した。

4月22日から7月2日まで、世田谷美術館にて「エリック・カール展 The Art of Eric Carle」が開催されている。1929年にアメリカに生まれ、なおご存命の絵本作家エリック・カール氏。この展覧会では、彼の絵本の原画、およびその他の作品たちが約160点展示されている。

第1部は「エリック・カールの世界」。彼の絵本作家としての思いを、じっくりと味わうことができる。彼の描く絵本で印象的なのは、「生き物」である。あおむしをはじめ、ふくろう、ゾウ、ヘビなど、あらゆる生きものが描かれている。あらかじめ色をつけた紙を切り取って貼り付ける「コラージュ」手法を用いており、細部までのこだわりが見え、あたかも彼らが生きているかのように感じる。

またカール氏の作品は、非常にメッセージ性に富んでいる。動物の家族が会話する様子を描くことで「家族の温かさ」、動物と共にカラフルな数字を描くことで「難しいことを楽しく」。伝えたいことを絵に託し、子どもたちのもとに多くの作品を届けてきた。そして、彼の作品に描かれている人間は、多様な姿をしている。ここに込められたメッセージはどんなものであろうか。

第2部は「エリック・カールの物語」。作品とともに、彼の人生を振り返る。もともとは絵本作家ではなく、広告のデザイナーをしていたカール氏。両親がドイツ移民であったためドイツで青年時代を過ごすが、当時は第二次世界大戦中のナチスが政権を握っていた苦難の時代であった。前衛的な芸術が禁止されていた中、フランツ・マルクやアンリ・マティスなど多くの芸術家にインスピレーションを受けた。また、彼は日本とのつながりも深い。『はらぺこあおむし』は日本の出版社の協力のもと世の中に出た。それ以来、彼は和服に影響を受けた『キモノ』という作品を描いたり、日本人作家いわむらかずおとコラボレーションしたりしてきた。このような、絵本を開くだけでは知ることの出来ない彼の「人生」という物語を眺めることによって、よりいっそう彼のアーティストとしての意志の強さと、こだわりを見出すことができる。

作品の展示だけではなく、様々なイベントも企画されている今回の展示会。彼が紡いできた優しい世界を存分に味わえること間違いなしだ。
(下村文乃)

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エリック・カール、『はらぺこあおむし』関連作品原画、制作年不詳、エリック・カール絵本美術館 ⒸEric Carle

エリック・カール、『はらぺこあおむし』別案原画、1984年、エリック・カール絵本美術館 Ⓒ1969 and 1987 Eric Carle

エリック・カール、『プレッツェルのはじまり』最終原画、1992年、エリック・カール絵本美術館 Ⓒ1972 and 1995 Eric Carle

エリック・カール、『うたがみえる きこえるよ』最終原画、1972年、エリック・カール絵本美術館 Ⓒ1973 Eric Carle

エリック・カール、『どこへいくの? To See My Friend!』最終原画、2000年、エリック・カール絵本美術館Ⓒ2001 Eric Carle

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