数年前に裁判員制度が始まり、われわれにとってさらに身近になった裁判。裁判は無料で市民に公開されているものの、観に行くきっかけはなかなかない。では実際の裁判とはどういうものなのだろうか。その様子を探るべく塾生新聞記者が、東京地方裁判所(以下、東京地裁)に足を運んだ。

入口でX線手荷物検査装置とゲート式金属探知機が設置され、警備員による検査を受けさせられる。セキュリティに関しては空港並みに万全の体制だ。

裁判所に入ってまずチェックすべきものは「開廷表」だ。その日に開かれる裁判の開廷時刻・事件名・進行状況が掲載されている。「開廷表」を見ると東京地裁では日々膨大な裁判が行われていることが分かる。この裁判所に来れば見る裁判に困ることはないだろう。

記者が当日傍聴を決めたのは「刑事裁判」。検察官・弁護士が対峙し、裁判官が判決を言い渡す、多くの人がイメージする裁判が見られるからだ。

実は東京地裁には食堂やコンビニ、喫茶店、書店などが併設されている。裁判の開廷まで時間があったが、記者もこれらの施設を利用した。空き時間が長くても有意義に過ごすことができる。

そしていよいよ法廷へ。開廷時刻の少し前から、法廷は開いている。用意されている傍聴席は少ない場合もあり、裁判によっては満席になる恐れもある。実際記者が見た裁判でもほぼ満席であった。

法廷に入ると、一気に空気が張り詰め、傍聴する身にも緊張感が走る。弁護士・検察官・書記官などはすでに入廷していたため、裁判前のやり取りも垣間見ることができた。

厳かな雰囲気の中、裁判官が入廷。法廷内の傍聴席も含む全員が一礼し、裁判が始まる。刑事裁判の場合は、被告人が裁判官・弁護士・検察官の問いかけに答える形で裁判が進む。被告人の表情などから、裁判の深刻さがひしひしと伝わる。罪を裁く検察官の尋問は迫力があった。また、被告人の陳述からは犯罪のリアルな光景が想起される。

今回傍聴したのは当日に判決が言い渡される「即決裁判」だった。傍聴一通りの手続き・証拠調べ・弁論が終了すると、判決が言い渡される。判決の宣言は被告人の人生を大きく左右する最も緊迫する瞬間だ。判決の言い渡し、告知が済むと、閉廷となる。閉廷まで、息つく間もなく進んでいった。

記者が傍聴したような刑事裁判では、犯罪を犯すことの重大さを改めて実感できる。また犯罪が人生を大きく左右することが分かる。

裁判の一連の流れからは生々しい人生の機微を見てとることができ、映画やドラマを見るよりも濃密な時間を過ごすことができる。法廷では非日常的な、それでいて私たちの人生と背中合わせの、リアルな人間ドラマが繰り広げられている。  (斉藤航)