「脱毛症」の症状やメカニズムを理解しているだろうか。慶大医学部専任講師の大山学先生にお話をうかがった。
脱毛症のメカニズムは、大きく分けて2つあるという。まず1つ目に、毛髪とそれを覆う毛包や、その内部の構造が壊れてしまうことにより引き起こされるケースが挙げられる。
毛髪は根元にある毛母細胞が細胞分裂することによって伸びる。そのため根元が炎症を起こすと円形脱毛症などの抜け毛が引き起こされる。また、根元ではなく頭皮にカビや細菌が付着し感染した場合でも毛髪が脆弱になり脱毛症に繋がるため注意が必要である。
そして2つ目は毛周期に異常をきたして起こるケース。全毛髪のうち約90㌫は成長期にあり細胞分裂によって伸びるが、残りの約10㌫は休止期にある。全ての毛髪は成長期と休止期を巡るサイクルを持ち、これらの段階を経ると必ず一旦は抜ける。異常をきたしてサイクルが早くなると、毛包が小さくなる。すると、毛髪は生えているのだが産毛のように細くなってしまうため、頭部が薄くみえる。これは男性型脱毛症などで見られる現象である。
しかし、「見た目で頭部が薄くなったことや抜け毛が多いということで脱毛を気にし始める人が多いが、本当にそれが脱毛症なのかを見極めてほしい」と大山先生は言う。毛髪は1日におよそ80本抜ける程度ならば正常とされている。「そのため抜け毛が多くてもそれが正常値の範囲であれば問題はない。また、男性脱毛症は短期間に生じるものではなく徐々に進行するため、焦らないでよく観察してほしい」とのこと。
そして脱毛症には心理的要因をはじめ栄養や環境など、さまざまな原因が絡んでいる。過度のストレスや無理なダイエット、偏食など、日々の生活から生じる原因も少なくない。更には他の病気の併発症状として脱毛が生じている場合もある。この場合は養毛剤などでは対処できず、大元の原因を治すことが必要とされる。「だからこそしかるべき医療機関で正確な判断をしてもらい指示を仰ぐことが大切である」そうだ。
脱毛症にはさまざまなパターンがあるが、専門的な医療機関では採血やスクーリングにより原因を特定し、その原因を取り除くことで脱毛症状を治療することもできる。そのため自分が正しい専門家にかかっているか否かが重要となる。
脱毛が気になった時にはよく考えて適切な医療機関に相談したい。
(片岡航一)