1月20日に東大が「入学時期の在り方に関する懇談会」の中間報告を発表し、秋入学への全面移行に関する議論が活発化し始めた。清家篤塾長は、東大が参加要請した秋入学を検討する協議会への参加意向を示した。東大の報告では全面移行を求めているが、塾長は「学生にとって最適な形」を目指すとし、慶大は全面移行に限らないという。正式な方針は来年の3月までに打ち出すとしている。 (小原鈴夏)

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 慶大はすでに環境情報学部、総合政策学部、法学部で9月入学を導入している。昨年度は132人が同制度を利用して各学部に入学した。秋入学全面移行に関して清家篤塾長は「現時点では、全面移行が前提ではなく、春秋両方の入学時期があり得ることを前提に議論する」とした。教育課程の複線化も含めた春秋両方の入学時期を検討し、「学生にとって最適な形」を模索する構え。
 東大は12大学(旧7帝大、筑波大、東工大、一橋大、早大、慶大)による協議体の設立を呼びかけ、慶大は参加を表明した。また、慶大内でも各学部長の懇談会が、すでに行われている。今後、大学間の協議、慶大各学部長間の協議を通じて、各大学の建学理念や慶大各学部での教育方針などを踏まえた検討がされるという。
 
 秋入学の意義について、清家塾長は留学生の受け入れと塾生の海外への送り出しについて言及。特に、秋入学の大学が多い欧米の学生との交流という面での利便性を指摘した。その一方で韓国など、春入学の大学もあることにも留意すべきとしている。
 秋入学によって生じる入学前および、卒業後のギャップターム(半年の空白期間)の影響は、学生やその家族、大学さらには社会全体にも及ぶ可能性がある。学生やその家族にとって、ギャップタームの間の生活費増大という経済面での負担の増加をどうするかが問題となる。大学側にとっても、春に合格者を決定してから、秋まで授業料を徴収できない事態となり、大学財政にも空白の期間が生じる。また、公務員や医師の国家試験など、春卒業に合わせた制度も多く、それらの改変も必要となってくるなど、課題は多い。
 その一方で清家塾長は「受験一辺倒だった学生が、ギャップタームでさまざまな経験を積み見聞を広め、問題意識を持って入学するという点などでの意義は大きい。経済的な面においても学費を自分で稼ぐこともできる」と、ギャップタームの利用の仕方のプラス面も示した。
 また大学側も、ギャップタームを生かしたプログラムを用意する姿勢だ。入学前に海外の学者の講演会や、短期留学のプログラムを用意することも検討しているという。
 秋入学に関して肯定的な可能性を指摘する一方で、清家塾長は「学生の選択肢を狭めてはいけない」と、秋入学への全面移行には疑問を示している。それに対し、東大が発表した「中間報告」では、教育課程の複線化はコスト面で困難が大きいとし、全面移行を求める考え。清家塾長は「今後も入学時期の具体的な内容については、じっくり検討していく」とし、正式な方針については今年の末、もしくは来年の3月をめどにまとめたいとした。