【ひと、生きる。】航空部 船曳 直志さん

「背中で引っ張る」

2009年度は、文字通り飛翔のシーズンとなった。
 慶早戦や六大学戦、全日本学生選手権などの5大会に出場し、その全ての大会で個人・団体ともに優勝するという快挙を成し遂げたのだ。
 「先輩達の偉業が今年のスローガン」と語るのは、今季の主将である船曳直志さん(経4)。
 高校までは文化系男子だったという彼がグライダーに興味を持ったキッカケは、父親の職場にいた航空部OGの存在だった。「大学でしか飛べない」と感じ、思い切って入部した。
 エンジンもプロペラも無い20㍍弱のグライダーでの滑空。大会によって異なるが、約40㌔㍍を1時間半ほどで飛ぶ。コースを回りきること、さらにその速さで点数を競う。ウィンチという機械でグライダーと繋がったワイヤーを巻き取り、凧揚げの要領で発航。その後、上昇気流を掴んで高度1000から2000㍍まで上昇する。
 この爽快感はたまらないという彼には、ほかにも好きな瞬間がある。「1年生が初めて飛んだ時。4年生が勝って着陸した時」。年間120日も合宿所で共に過ごす仲間が何かを達成した瞬間だ。一人一人が操縦士でありクルーであるという航空部は絆が強い。
 空は魅力的だが、自然が相手なだけに危険もある。50時間毎の整備などリスクケアに余念がない。10年に1度くらいは事故が起きることがあるそうだが、「やることをやっておけば、事故は防げる。一番大事なのは人の意識」と語る。
 「気の緩みは命取り。主将として、最終的には背中で引っ張る」。4年生になって芽生えたエースの自覚と共に、彼は今日も熊谷の滑空場で飛翔する。
(井上史隆)