《MITASAI REPORT-2022》歌舞伎研究会 3年ぶり悲願の公演に涙 伝統を未来に繋げる努力

三田祭最終日となる11月23日(水)、「歌舞伎研究会」は14時より西校舎527教室にて『第62回 慶應大歌舞伎』の公演を行った。コロナ禍を経て、3年ぶりの現地公演となった。

演目は「本朝廿四孝 十種香」。3人の役者が、武田信玄の嫡男「勝頼」と長尾家の息女「八重垣姫」、その腰元「濡衣」を演じた。公演にはイヤホンガイドが導入され、事前の知識のない観客も解説を聴きながら楽しめるよう配慮がなされた。

舞台は穏やかな三味線の演奏から幕を開け、「竹本」と呼ばれる語り手が独特の抑揚を持った声で情景を語る。担当するのは、いずれも学外から協力に出た本職の関係者だという。学生である3人の演者は、華やかな衣装に身を包み、鋭く独特な抑揚のある声で台詞を響かせた。八重垣姫の舞踏では、金色の刺繍に彩られ煌びやかな赤の着物が華やかに揺れ、優美な動きとともに頭に飾られた銀の吹輪が輝いた。

公演の様子

舞台後の挨拶で、代表の結城和臣(商4)と演者たちは共に涙で声を震わせた。「コロナ禍で公演が叶わなかったこの3年間、辛く長い時間でした。今この舞台が実現し、こうして皆様の前で話せていることに涙が溢れる想いです…」涙で言葉が詰まると、会場からは暖かな笑いと拍手が起こった。

コロナ禍の歌舞伎研究会は、存続の危機にも晒されていたという。駆け付けた三田会OBは、自身が4年前に同団体の代表をしていた経験から感想を語る。「コロナ禍で、お稽古もあまり多くできなかった世代です。歌舞伎研究会は、今年で創立96年の長い歴史を持つ団体ですが、新入生があまり入らず、コロナ禍が拍車をかけた状況でした。それでも今回こうして公演が実現したことは、学生の伝統を繋ぐ努力の結果に他ならず大変嬉しく思います」

一方で、厳しい状況に変わりはない。現在のメンバーは全員で5人。来年には2人が卒業してしまうため、来年度の新入生の確保が死活問題となる。

八重垣姫を演じた二見遼(文4)は、歌舞伎研究会の魅力を語る。「普通の学生ではできない特別な経験が沢山できます。本職の方など、その道のプロの方々と関わり多くのことを学べました。私にとって、慶應への入学は舞台人になるという夢を諦めた道でした。しかしながら、歌舞伎研究会で本格的で豪華な舞台に立たせていただくことで、一度は破れた夢を叶えることができたのです」

4年後には創立100周年を控えた歌舞伎研究会。「伝統を繋ぐ努力」によって絶えず繋がれてきた舞台が、未来にも末永く続いていくことを願いたい。

(和田幸栞)