《塾員インタビュー》「全てを知り尽くすことがない、動物の世界」篠原かをりさん インタビュー

2021年に慶應義塾大学大学院、政策・メディア研究科を卒業し、タレント、動物作家、研究員として多方面で活躍する篠原かをりさん。「好き」を仕事に、興味を追求しながら前に進み続ける塾員の姿を取材した。

篠原さんを語るには欠かせない「動物」に興味を持ったきっかけはありますか。

物心ついた頃から、動物園や図鑑に触れる生活をしてきました。動物の世界は、全てを知り尽くすということがありません。だからこそ、新しいことがどんどんわかっていき、ずっと面白いコンテンツが更新され続ける。また、昆虫の新種を発見する人にはアマチュアにも多いなど、研究と趣味の間につながりがあるところも面白いです。

世界中の動物と触れ合うミステリーハンターとしても、活動をされていました。印象に残った撮影はありますか。

そうですね。どの国もとても記憶に残っていて。滞在する2週間くらいでは到底追いきることはできないのですが、印象深いのはブラジルのガイアナでの撮影です。草原の中に、川辺に生息しているはずのワニの死体が残っていて。ワニが行動できる狭い範囲に、熱帯雨林や川、草原などが混在していることを知り、環境の多様性に驚きました。

SFCの政策・メディア研究科で研究されていた分子生物学について教えてください。

私は食と栄養に関心があったので、タンパク質に着目しています。近年のダイエットといえば「高タンパク・低炭水化物」が定石。ですが、そんなタンパク質も、取りすぎてしまうと、体に悪影響を与えてしまうかもしれません。
また、胎児期におけるタンパク質の摂取量などの栄養環境は、大人になってからの健康にいくらか影響を与えるかもしれません。こういった身近な問題について、食と健康の関係を明らかにすべく研究しています。

ありがとうございます。分子生物学を学びながらも、日本大学の大学院では、動物文学の博士号取得を目指されているのは何故でしょうか。

もともと、今後メディアなどで活動していく上で、博士号は取りたいなと考えていて。でも、他の仕事との両立を考えると、分子生物学で博士号を得ることは難しく、違う分野を選ぶことに決めました。
私が初めて触れた動物文学は、『シートン動物記』。読み終えてから、「これ以上シートンの書く動物記を読むことができないんだ」と寂しさを感じるくらい、好きな本でした。動物や執筆が好きだという自分の強みを生かせば、研究も仕事も両立できるかもしれない。そう思ったことがきっかけで、動物文学を選びました。

動物文学の研究内容は。

私は蚕と蜂に注目しています。蚕も蜂も、人間に対して目に見える形で利益をもたらしてくれる昆虫です。身近な存在だからか、女性っぽい、男性っぽいといったイメージが加えられていることも多く、文化表象として特別な部分があるのではないか、と研究をしています。例えば、蚕は女性の手で育てられることが多く、女性的なイメージを持たれています。ですが実際にはほとんど性差はありません。そして、メスが中心で群れをなす蜂ですが、過去にナポレオンの紋章になっていたり、オスのイメージで捉えられていたこともありました。このように人間から動物へ、勝手に女性性や男性性をつけてしまうところが面白いです。

ここまで、動物を軸とした多彩なお仕事のお話を聞いてきました。このように「好き」を仕事にすることにはどのような想いを持っていますか。

好きなことを仕事にすると、「仕事と結びつくことで嫌いになってしまう」こともあると思います。ですが、仕事にすることで、ただ好きなだけでは知らなかったことも体験できると実感しました。ガイアナでの経験なども含め、「好き」を仕事にすることには、大きなメリットもあるなと感じています。その反面、好きだからこそ、その分野を裏切りたくない気持ちもあります。こんな自分が専門家を名乗ってもいいのか。実力不足であることが悔しいという思いがモチベーションになり、勉強も仕事も続けられています。

大学時代から、ミステリーハンターなどお仕事もされていたかと思います。両立で大変だったことはありますか。

生き物が関わる実験だったため、実験を初めてしまうと時間も予定も拘束されてしまうところは、なかなか両立が難しかったです。また卒業時期がずれていた関係で、誰も私の卒業時期を把握しておらず、論文の中間発表があることを、その前日、ロケの最中に発覚したことがありました(笑)ロケが終わってすぐに発表の資料をまとめて提出しなければならず、とても忙しかったことを覚えています。

慶大在学時に大学での思い出やキャンパスの印象などお聞かせください。

SFCのキャンパスで、ヒラタクワガタを捕まえられた時、「とても環境豊かな場所に来たなあ」という印象を受けました。
一度、最寄駅からキャンパスまで、バスを使わずに歩いてみたこともありました。そうしたら野生のキジにも出会って、「桃太郎の世界観だ」と(笑)のどかな気持ちになれる、いいキャンバスだったなと思います。
仕事との両立が難しくて諦めかけてしまった時も、教授や助教と話すことで、「できるかもしれない」と思うことができてしました。師事している先生にとても恵まれました。今でも、時間があれば解剖の手伝いに行くなど、関係は持ち続けるようにしています。

ありがとうございます。最後に学生時代にやっておくべきことや、将来に悩む学生へメッセージをお願いいたします。

好きを仕事にすることが正しいということではないと思います。特に学部生などは、単位などの強制力に意識が向いて、「楽しさ」や「好き」を受け取りにくいかなと思います。ですが「楽しいかもしれない」、「楽しもう」という気持ちで取り組んでみることも大事ではないでしょうか。「やらなくてはならない」に惑わされず、楽しんでみる気持ちを持つことができれば、いつかその勉強が役に立つ時が訪れたり、その分野を好きなることもあると思います。応援しています。