スマホの最前線にせまる!慶大・杉浦准教授インタビュー

今年 5 月、慶應義塾大学、東京工科大学、yahoo 株式会社 Yahoo! JAPAN 研究所の共同 研究グループは、スマホがどのような持ち方で使われているのか推定できる新手法「リフレ クタッチ」の研究成果を発表した。リフレクタッチは瞳に反射した、スマホを覆う指の影の像を読み取ることでスマートフォン がどのような持ち方で使われているのかを推定し、持ち方に合わせた画面表示や適切な把持体勢、使用を中断し休憩をとることなどをユーザーに提案するシステムだ。

スマートフォンは現代社会を生きる上で必須の機器だ。娯楽から買い物、行政手続きに至るまで、様々なサービスにアクセスできる。総務省のデータによるとスマートフォンの世帯保有率は全国で八割を超えており、今やその使用は当たり前になっている。しかし使用に伴い健康的なリスクがあることは見逃されがちである。視力の低下はよく取り上げられるが、スマートフォンを長時間利用することに腱鞘炎等を引き起こすリスクがあることは、あまり認知されていない。新型コロナウイルスの流行でスマートフォンをはじめとしたモバイル機器を長時間使用する機会が増えた。それに伴い手に関する疾患を患う人が増加している。リフレクタッチにはそうしたスマホの長時間使用によって引き起こされる様々な疾患を防止する役割も期待されている。今回は研究開発に携わった慶應義塾大学理工学部の杉浦裕太准教授に話を聞いた。

 

 

研究が開始された経緯について杉浦准教授は次のように語る。「使うことが当たり前になったスマートフォンだが、電車で吊革を掴んでいるときや赤ちゃんを抱いているときなど、持ち方が制限される場面もある。持ち方が制約される中で適切なユーザーインターフェースを提供する必要を感じた」。ユーザーインターフェースとはコンピューターや各種サービスとユーザーをつなぐ存在を指す。多種多様なサービスにアクセスできるスマートフォンはインターフェースの塊と言える。

杉浦准教授の研究テーマは「懐に入り込むインターフェース」だ。物理的にも心理的にも、人に密着したインターフェースの開発を目指す。杉浦准教授は自身の研究テーマと今回開発されたリフレクタッチの関係について、「スマートフォンが持ち方を把握してくれるということで、デバイスの方からユーザーの方へと歩み寄ってくれるような感覚を覚えてもらえると思う。スマートフォンとより良い関係を築く足がかりにもなるだろう」と話した。

杉浦准教授は医療と工学の融合である医工の分野の研究にも力を入れており、手根管症候群を簡易的に検査できるアプリゲームの開発に携わったこともある。手根管症候群とは、手指にしびれや運動障害の症状が出る疾患で、その有病率は高齢者を中心に全体の二~四パーセントと言われている。そのうえで杉浦准教授はスマートフォンなどのモバイル機器から得られるデータの多さに着目する。モバイル機器には多数のセンサーが標準的に装備されおり、それらを活用することでより多くのシチュエーションで人のデータを得られるという。

 

 

これからの研究活動の目標についても聞いた。「現在主流のユーザーインターフェースというと、ユーザー自身が操作しなければならないものが多い。何をするにしてもリモコンやコントローラーを操作する必要がある。しかしコンピューターの方から歩み寄ってきてくれれば、そのようにユーザーが主導的に操作する必要がなくなる。気づいたら勝手にユーザーに合わせた、必要な機能を提供してくれる。そうした意識せずとも使えるコンピューターの開発を目標に研究を続けていきたい」と語った。

また「楽しさ」も杉浦准教授にとっては重要なキーワードであるようだ。「見てワクワクするものを目指したい。リフレクタッチに関しては目の反射という、その発想はなかったという驚きを感じてもらえると思うし、そのようなついユーザーが使いたくなるような技術の開発を目指す」と続けて語った。

そのうえで准教授が目指すビジョンについても聞いた。杉浦准教授が目指すのはデジタル機器を用いてより快適に、そしてより楽しく暮らせる社会だ。そのための情報技術の基盤を作ることに、これからも注力していきたいと結びに語る。今後も実用性と遊び心を兼ね備えた杉浦准教授の研究に注目である。

 

杉浦裕太准教授

 

(姫野太晴)