「就活が圧倒的に有利になる」「就活無双するなら」「経験と実績が他の就活生と差を生み出す」「大手内定実績多数」どれも、長期インターンという単語を修飾するフレーズで、現代の日本社会における長期インターンへのイメージを表しているともいえる。そもそも「長期インターンとは一体何なのか」あなたはそんな疑問を抱いたことがあるだろうか。長期インターンの真髄を探るため、実際に長期インターンをしている塾生3人に話を聞いた。

E.Kさん(経済学部経済学科 4年男子) 

リーディングマーク社 大学2年2月〜大学4年3月(予定)

Y.Oさん(文学部美学美術史専攻 2年女子)

プレジデント社 大学1年3月〜大学2年3月(予定)

M.Nさん(文学部独文学専攻 2年男子)

エル・システマ ジャパン 大学1年生12月〜大学2年生6月(予定)

 

「長期インターンをしたかったわけではない」

「長期インターンをしたかったわけではない」なぜ長期インターンを始めようと思ったのか。その理由を聞くと、M.Nさんからはこんな答えが返ってきたのが印象的だった。

「最初のきっかけは、企業自体に興味を持ったことです。高校一年生のときに使用していた英語の教科書に、エル・システマについての文章が載っていた。それを読んだときから、『大学生になったらこの企業に携わりたい』とずっと思っていました」M.Nさんは長期インターンを始めた原点をこのように振り返る。しかし、大学生になって実際にその企業について調べてみると、学生としてその企業に関わることが出来る手段がなかった。

「自ら企業に直接電話をかけて、働きたい旨を伝えました」M.Nさんは、自分の関心や価値観が企業の方針と見事に一致していると当時感じたことを鮮明に覚えており、それが、長期インターン開始に至るまでの行動力に繋がった。

一方で、Y.Oさんが長期インターンを知ったきっかけは、所属しているサークルのlineグループで偶然送られてきた紹介。目の前にある自分が好きなことをやろうとしたら、それがたまたま長期インターンだった。「常に、『好き』、『楽しそう』の気持ちで動いている。目の前にチャンスが転がってきら、絶対に逃したくない。面白そうだなと思ったら本能的に飛びついてみるというのは、長期インターンに限らず、学生生活の色んな場面において常に意識しています」

一般的にみると比較的早い時期から長期インターンを始めたY.Oさんだが、その開始時期について、「一、二年生だと『まだいいか』と思う人は少なからずいると思います。しかし、自分が心の底からやりたいと思うことは、いつ始めようが変わりません」と語っていた。

 

「デメリット」から学ぶ

長期インターンのデメリットについて聞くと、全員に共通する回答があった。事務作業のような地味で単純な業務が多く、外から見る企業と中から見る企業にギャップを感じたことだという。

しかしE.Kさんは、そのギャップについて次のように指摘する。「『数千人を集めるような合同説明会の運営・統括をしています』と言うと、聞こえは格好がいいです。でも、一つ一つの過程を細かく見ていくと、実際やっていることは、説明会の資料をスプレッドシートやパワーポイントで作成したり、企業の方とメールでやりとりしたり、イベント当日にオフィスの中を走って機材を集めたり、といったこと。しかし、これは企業に勤める社会人でもほとんど同じだと、長期インターンを通じて思うようになりました。どんなに小さく地味な作業でも、その積み重ねが大きなイベントに繋がるんです」

加えてM.Nさんは長期インターンのデメリットについて、給料が発生していないことも挙げた。「お金をもらって、それに値する仕事をしたいようであれば、給料の発生の有無はきちんと調べたほうがいい」

しかし、M.Nさんは「お金が欲しいから長期インターンをしているわけではない」という。「もちろん仕事は『楽しい』だけではいけないと思う。責任が伴うし、やりたくないこともするから、その対価でお金を得るという側面もあります。しかし、お金儲けや経済的安定よりも、他人への貢献を肌で感じることで、仕事をしている実感が得られる。自分の興味・関心の延長で仕事と向き合い、自分の仕事にやりがいを感じる。色々な考え方はあるが、自分自身は、それが仕事の本来あるべき姿だと思います」

 

さいごに

「長期インターンとは一体何なのか」という釈然としない葛藤を抱くようになった背景には、現代の日本社会における就活事情やそれに伴う風潮に対する違和感が根底にある。そんな疑問を投げかけると、3人は次のように語っていた。

「私は3年生の11月に自分の志望業界であったコンサルへの内定が決まりましたが、就活がこれだけ早まってしまうと、内定が決まってからの残りの時間、何をしたらいいのだろうと考えるときはあります。3、4年生で就活に割く時間を専攻分野の研究に当てられたらとも思う。大学は、本来学問をするところであるし、もっと就活シーズンを遅らして、その分専攻分野の研究に熱を注ぐ方が面白い」(E.Kさん)

「就活の時期が近づいてくると、『とりあえずやっておこう』といった具合にインターンを始めるという、お決まりの流れのようなものがある。周りがやっているからとか、そういうふうによく言われているからとか、大人が言うからとか、関係ない。風潮に流されず、常に自分主体で動き続けることが大切」(Y.Oさん)

「大学は学問をする場所であって、就活のための場所ではない。自分のやりたいことをやる。自分の興味あることを学ぶ。それが大学生の本来あるべき姿だと思う。将来への不安はあるかもしれないが、先のことを意識してしまったら、自分が本当に大切にしたいことを見失ってしまう」(M.Nさん)

「長期インターンとは一体何なのか」長期インターンを始めてみたいと思った人こそ、一度立ち止まって問いかけてみて欲しい。

(柴田憲香)

以下1年生による、現役現役4年生で長期インターン経験者へのインタビューです。

 

「ショックをエネルギーに変える」

来る6月は大学4年生たちにとっては、気が休まらない期間になるだろう。来月から本格的に、多くの企業において面接や選考が解禁されるからである。そんな中、私たちは昨年11月に内定先が決まった、現役慶大4年生のE.Kさんに取材し、長期インターンシップでの活動を軸に、彼の就活ストーリーを追ってみた。

 

日米間におけるカルチャーショックが学生団体への動機付けに

E.Kさんは、高校3年間を米国・シカゴで過ごした後、慶大経済学部への進学を機に帰国した。日本での大学生活で、授業の風景や形態などの違いを目の当たりにし、一種のカルチャーショックを感じたことを次のように語る。「同じ教室内にいても、男子は男子、女子は女子で固まる、という感じ。また、アメリカにいた頃はディスカッション等の授業が多かったですが、日本ではそのような授業は滅多にありません」
このギャップを機に、一年の秋に国際系のビジネスコンテストを展開する学生団体に入会。日中韓の3カ国から学生が集まり、自分の思いを言葉に変えて交流する。米国での体験をもとに踏み切った入会だった。

 

学生団体からインターンへ。そしてインターンへの思いを強める言葉との出会い

最初は学生団体に「参加」するだけだったE.Kさん。次第に運営する側に回り、その業務内容と接点のある人材系の会社でインターンを始め、現在は、週に3回業務に励んでいる。そうしたなか、インターン先の人からもらった言葉に衝撃を受けたという。
「『今の日本のサラリーマンで自分の仕事にやりがいを感じている人は2割を切っている』と言われたことがありました」実際に、インターンを始めた当初、E.Kさん自身も将来どうなりたいのかを明確に描けていなかった。そして、周りの友達もきちんと自分の将来と向き合うことが出来ていない印象を抱いていたそう。
「この現状を根本的に改善したいと思いました」と強調したうえで、インターンを続けることにした決め手を次のように語っていた。「就活で色んな企業を集めて合同説明会を開き、自分にあっている会社を見極め、将来満足できるような仕事を見つけてもらう。このように、就活というイベントを通して、個人の適性を尊重しながら業界・仕事を決めるのを支援することは、人々の仕事に対するやりがいの向上に繋がるのではないかと考えました」

 

就活の早期化に疑問を感じることも

3年生の11月、自らの志望業界であったコンサルへの切符を手に入れたE.Kさんだが、今の日本の就活事情に違和感を憶えているという。「就活がこれだけ早まってしまうと、内定が決まってからの残りの時間、何をしたらいいのだろうと考えるときはあります。3、4年生で就活に割く時間を専攻分野の研究に当てられたらとも思う。大学は、本来学問をするところであるし、もっと就活シーズンを遅らして、その分専攻分野の研究に熱を注ぐ方が面白い」
就活というお決まりの流れに対して同じような疑問を感じている人の中には、文系では珍しく大学院進学を視野に入れている学生も身近にいる。そんな人たちの背中を押す発言も見受けられた。

 

未来の就活生たちへ

最後に、今後就活に直面する学生たちへのアドバイスを聞くと、「サークルでも、バイトでも、長期インターンでも、何でもいいから何かしらのコミュニティで精一杯頑張ること。そして、自分の興味のある分野は迷わず首を突っ込んでみることが大事」と語っていた。
「自分の興味・適性を自己分析し、早い段階で見つけられると、自分がやりたいことがどんどん広がっていきます。自分自身は、ビジネスコンテストの学生団体の運営や、そこで英語を使ってビジネスをした経験が、社会人になってコンサルの業界に行きたいという目標にも繋がった」
現実に直面して受けたショックを単なる負の感情として捉えるのではなく、それをエネルギーに変えることで道が開けることを教えてくださったE.Kさん。今後も続くであろうコロナ禍における厳しい就活市場に身を投じる未来の就活生も、このような姿勢を保ち就活に挑んで欲しい。