「もぐり」をご存知だろうか?「もぐり」とは文字通り授業とは無関係の人間が講義に「潜って」出席することである。オンライン授業が多かったコロナ禍にはほとんど耳にしない人もいただろう。今回は実際にもぐりをしていたというM氏に話を聞くことができた。

前提として「もぐり」は推奨される行為でないことには留意してほしい。しかし、その行動力、学習意欲には感服する。我々は過去の遺産を掘り起こすが如く「もぐり」について調べた。

 

もぐり体験談

M氏が過去にもぐった講義は国文学とドイツ語の授業。いずれもオンデマンドの講義だった。国文学の授業は春学期に履修していたが、秋学期は取っていなかった。授業が面白く続けて履修したいと考えたMさんは教授にアポをとり、教材をもらったという。ドイツ語では、ドイツ語学習で教授に相談していた際に他授業の教材をもらったそうだ。その教授が他の授業で使っていた教材だった。今でももぐりで手に入れた教材は何度も見返して重宝しているらしい。

 

自由に、純粋に学問を楽しむ

もぐりをするメリットは何だろうか。一つは成績を気にせず、学問を純粋に楽しむことができることだ。忙しい場合には、自分でペースを決めながら学ぶことができる。「自由さ」それこそが一番のメリットである。そして、その自由さが故に幅広く学ぶことが可能である。

「カリキュラム以外の授業を受けてみることは大切。本や講演会、今の時代YouTubeで亡くなった先生の授業を見ることだってできる。それと平行して、学習の手段として大学の授業にもぐって見るのもありなんじゃないか」とM氏は話す。

かのスティーブ・ジョブズももぐりをしており、さまざまな分野の授業にもぐっていたという。もぐったカリグラフィー(カリグラフィーとは文字を美しく見せる手法のこと)の授業で得た知識が後のApple製品のフォント重視につながったとか。もぐりに限らず色々なものを学ぼうとする姿勢は必ず自分の糧になり、将来につながる良い例だ。

 

もぐるのはどんな授業?

今回取材したM氏の事例はオンデマンドでのもぐりと、かなり特殊なケースだった。ただ形は関係なくもぐりはもぐりだ。M氏は先生を軸にもぐる授業を決定している。人気教授であればもぐる人も当然多くなる。ips細胞で有名な山中伸弥教授の授業では、もぐりの人のために席まで用意されていたそうだ。それでも結局それ以上に人が来て教室から溢れたらしいが。

 

実は隣の学生は…

最後に一つだけ、無断でもぐるのは止めよう。特にオンラインの場合、教材の二次配布を固く禁止されている場合が多い。どうしても受けたい授業があるなら、事前に教授に連絡してみてほしい。やりとりしていく中で教授と仲良くなれる可能性だってある。自分の話に対して興味を持ち、もぐってまで聞こうとしてくれる人間に対して悪い気は起こらないものである。

 

今年度から授業の約9割が対面に戻り、かつてのキャンパスライフが戻りつつある。新歓、サークル、対面テスト、そしてもぐり。あなたのすぐ隣で授業を受けている学生は、もぐりなのかもしれない。

 

(石沢健太)