慶應義塾大学は6月26日、ユネスコと協力協定の調印をした。慶大は、環境情報学部の村井純教授の下、School on Internet Asia(SOI Asia)プロジェクトを2001年に開始。以来、アジア諸国の高等教育機関での授業の相互交流を推進してきた。今回の調印はユネスコがそのプロジェクトに目をつけて実現したもの。アジア地域の持続可能な開発のため、科学技術と情報技術の活用の推進、人材育成等を目的とし、大学とユネスコの相互の協力が促進されることになる。

(遠藤和希)

 現在、アジア地域では発展した社会、経済が将来的に持続可能であることが求められており、優れた人材の育成が急務となっている。その人材育成のための教育方法、研究の強化を目的として、SOI Asiaプロジェクトが村井純教授により、2001年に発足。以来、衛星およびインターネット技術を利用し、グローバルな教育環境を構築してきた。現在では、13カ国27大学・研究機関が参加しており、大学間の授業の相互交換を推進している。

 SOI Asiaは既に2007年より、ユネスコと協力して「再生可能エネルギーeラーニングパイロットプロジェクト」を開始しており、バイオエネルギー、再生可能エネルギー政策と計画、太陽エネルギーに関する授業を南アジアおよび、東南アジアに配信していた。

 今回の調印式は活動をさらに拡大し、ユネスコの持つ教育コンテンツと、慶大が持つSOI Asiaが構築するアジア地域の教育ネットワークを相互に活用し、より充実したアジア地域の教育環境の構築を意図している。具体的な活動として教育の相互交)流の他、アジア地域のICT(情報コミュニケーション技術)ネットワークに接続する可能性の検討など、ICTのインフラの強化や教育の範囲の拡大を行う方針を示した。

 2日間に渡って開かれた、SOI Asia Summit 2008の初日の調印式にはユネスコの事務総長代理のヒューバート・ハイゼン氏、前財務大臣の尾身幸次氏等が出席。基調講演や、パネルセッションが行われた。

 初日の会議において運営をしていた政策・メデイア研究科博士課程の片岡広太郎氏は今回の慶大との調印の意味を「学術的にも、工学的にも、社会学的にも今回の調印の意義は大きい。ユネスコは以前から、SOI Asiaのプロジェクトに関心を寄せていた」と語った。

 慶大の常任理事である村井純教授は今後も、インターネットによる相互教育を推進するため、ネットワークの領域をさらに広げるものと見られている。