昨年10月31日の早慶戦で劇的な六大学優勝を果たし、11月25日の明治神宮大会でも準優勝に輝いた慶大野球部。慶大の主将また扇の要として、チームをまとめ上げた福井章吾選手(環4)に話を聞いた。

 

福井章吾選手

ーー最後の早慶戦を迎えるにあたってどのような心境でしたか

まずは早慶戦に優勝がかかってくるということが分かった時には、昨年の経験もあり不安な気持ちになりました。しかしいくら伝統のある早慶戦とはいえど、リーグ戦の10試合のうちの1 試合、5カードのうちの1カードに過ぎないということを頭の片隅に入れながら、できる限りいつも通り試合に挑むということを意識しました。

 

ーー慶大野球部は六大学野球の春秋連覇を果たしましたが、その強さの要因は何ですか

試合に出ている9人、ベンチに入っている25人だけではなく、データを扱ってくれている4年生や普段はスポットの当たらないマネージャーなど、一人一人が自分の持ち場をしっかりと理解をしてできていたことだと思います。また、チームスローガンである繋勝~Giving back~には「還元」という意味が込められており、誰かが頑張ったから誰かが報われるというメンタルをチーム全員が持てたことが春秋連覇につながったのだと思います。

 

ーー昨年の秋は早慶戦で優勝を逃すという悔しい結果に終わりましたが、今秋の早慶戦で粘りながらも引き分け、優勝に持ち込むことができた要因は何ですか

あとアウト一つ、あと一球ということを意識しながら取り組み続けたことが、昨年の秋とは違う結果に繋がったのではないかと思います。

 

ーー今シーズンで一番苦しかった試合、良かった試合は何ですか

一番苦しかった試合は10月31日の早慶戦です。昨年秋に同カードで敗北し優勝を逃したという悪いイメージがあるなかで、試合展開も最後の最後まで読めなかったのでキャッチャーとしても苦しかったです。

良かった試合は 10月19日の法政大戦です。春のリーグ戦で法政大・三浦銀二投手(横浜 DeNAベイスターズ,ドラフト4 位)にノーヒットワンランを達成されたことを受け、三浦投手を打つということを目標にしてきました。そのなかで三浦投手が本調子ではなかったとはいえ、しっかりと三浦投手から打って勝てたということで春からの成長を実感できました。

 

ーー苦しい試合が続くなかで、主将としてどのようにチームを引っ張っていったのでしょうか

法政戦が終わりあと早慶戦だけを残した時に、メンバーに春のリーグ戦は上手く行き過ぎていたのではないかという話をしました。春は二戦目から八連勝して早慶戦を迎える前に優勝が決まり、他校の勝敗も関係しつつもうちの調子が良すぎたというのが一つありました。また春の六大学野球で優勝し全国大会まで優勝したため、周りのチームが打倒慶應という気持ち向かってくるのは百も承知だったので、苦しいシーズン、苦しい試合になるのは想定内でやっていこうという声掛けをチーム内でし続けてこの秋のリーグ戦を戦い抜きました。

 

ーーこの一年間主将として意識していたことは何ですか

まず自分自身をぶらさないということです。僕が打とうが打たまいがチームが勝とうが負けようが、僕自身がモットーとしている「明るく元気にやる」ということを曲げないで一年間取り組んできました。自分の結果は二の次三の次で、チームの雰囲気やチームでやってきたことがしっかり出来ているかをチェックすることに力を入れました。

福井選手のポジションはキャッチャー

ーー早稲田大学に所属する、大阪桐蔭高校時代のチームメイトであった徳山壮磨投手(横浜DeNAベイスターズ,ドラフト2位)と岩本久重捕手の活躍についてどう思いますか

徳山は春のリーグ戦で思うような結果が出せず苦しいシーズンを送っていたこともあり、彼から夏の期間によく相談を受けました。高校の時に一番仲が良かったのが徳山だったので、今は敵ながら、活躍してほしいという気持ちとプロに行ってほしいという気持ちがありました。そういった意味では秋のリーグ戦で徳山らしいピッチングを見せてくれて、苦しい壁を自分の力で乗り越えたんだなと思い嬉しかったです。

岩本とは同じキャッチャーというポジションということもあり、お互いが三年生になった際に、ベストナインという1つの指標を争おうという話をしていました。そして僕はチームにも恵まれて3回ベストナインを獲得させていただき、岩本はベストナインを獲得することはできませんでしたが、彼がいたからお互い高めあうことができ結果を出すことができたので本当に感謝をしています。

 

ーー試合前のルーティンはありますか

僕はとても緊張するタイプなので、同じキャッチャーの善波力(商2)と一緒にキャッチボールをしたりキャッチャーの練習をしたりして不安を取り除いています。 また神宮球場にはいつもバスで向かっていすのですが、隣は必ず一番仲の良い友達の橋本典之(環4)で、彼と緊張感をほぐしあいながら球場に向かうっていうことがルーティンだと思います。

 

ーー明治神宮大会にむけての準備の方はいかがですか

※明治神宮大会は既に終了。11月25日の決勝戦で、慶大は中央学院大に敗れ惜しくも優勝を逃した

まずリーグ戦の日程が変則的で僕自身もスタミナ的にしんどかったので、コンディションを回復しています。また明治神宮大会は全日本大学野球選手権と違ってリーグ戦から一か月弱空くので、やるべきことをしっかりクリアにし少し厳しいランキングメニューも乗り越えて、もう一度仕切り直しができているので手ごたえとしては順調だと思います。

 

ーー四冠への意気込みはいかがですか

四冠というのは嫌でもチラついてくるので意識していないと言ったら噓になりますが、四冠というのを意識したからといって達成できるものではないと思っています。まずは初戦、その次に準決勝、決勝というような気持ちで、チームのテーマでもある「一戦一勝」を成し遂げることが四冠への最大の近道だと思っているので、ニュアンスは難しいですが四冠をそこまで意識していないです。

 

ーーこれまで大久保監督、堀井監督と2人の監督のもとでプレーされてこられましたがいかがでしたか

慶大で一緒にプレーしてみないかと大久保さんがお誘いしてくださって今の自分があるので感謝しています。選手として神宮球場で大久保さんの下でプレーをした経験は少なかったですが、野球観などキャッチャーとして、リーダーとして多くのことを学ぶことができました。大久保さんがもっている大久保イズムが僕の中に残って今回の春秋連覇につながった部分もあると思うので、感謝しています。

堀井監督の下でプレーさせて頂いた2 年間は主力として、また正捕手としてやらせていただいたこともあり非常に濃いものがありました。堀井監督は非常に緻密な野球をされるので、なぜこうなのか、今何をするべきなのかということや、野球の奥深さなど今から30分でも40 分でも語れるくらい多くのことを学ばせて頂きました。本当に堀井監督のもとで野球ができてよかったと思います。

バッターボックスに立つ福井選手

ーー来年の慶大の新チームで期待している後輩はいますか

みんな期待しているのですが(笑)、ぼく個人としてピッチャーは橋本達弥(環3)に期待しています。今年は抑え投手としてフル回転してくれましたが、本当は先発投手として投げる力もあると思っています。これまで何人もプロに行ったピッチャーを見させてもらいましたが、彼が持っているものは本当にピカイチだと感じているので橋本達弥にはかなり期待をしています。

あとは僕の後釜になってくれるであろうキャッチャーの善波力(商2)です。彼は部屋が同じで弟のように可愛がっており、期待も大きいです。プレッシャーもあると思いますが、それをはねのけて強い慶應を繋いでいってほしいと思います。

 

ーー来年以降の慶大野球部にどのようなチームになってほしいですか

まずは自分たちの色というのを大切にしてほしいと思います。僕たちの代は僕たちらしく取り組みましたし、良い部分はもちろん盗んでほしいのですが、僕たちの学年が勝ったからといって全てが正解というわけではないので、自分たちの色を出していってほしいです。また戦術的な部分からチームを俯瞰的にみたところ、来年はピッチャー中心のチームになるのではないかと思います。主力の投手がかなり残るので、バッテリーを中心にロースコアをものにしていくような堀井監督の目指す野球をより一層体現できるチームを見たいと思いますし、そういうチームになれるのではないかと思います。

 

ーー来年からトヨタ自動車で野球を続けていかれますがいかがですか

まずは慶大で学ばせて頂いたことを存分に発揮したいです。せっかく今まで学んできたことを消してしまうと何の意味もないので、自分らしくチームに新しい風を吹かせることが出来れば、自分にとってもトヨタ自動車野球部にとってもプラスになると思います。

 

ーーチームとしての目標と社会人野球に進んでいくなかでの個人としての目標は何ですか

チームとしては勝つことというのは必然的に目指して行くべきことだと思いますので、そこを大前提としたうえで、「あの時の慶應」という風に覚えてもらえるような歴史に残るチームを目指していきたいと思います。また四年生としては勝つことだけではなくて三年生以下に何かを残したいという思いもあります。今年のスローガンの「繋勝」は受け継いでいくという意味の「継承」にもかかっていて、そういった意味では何かを継承できればいいという思いがチームとしてはあります。あとは四冠という目標は発言しておかないと面白くないので(笑)。やるからには四冠を目指します。

個人としては高校、大学と主将として日本一を経験させてもらって、これはもちろん周りの 監督や選手に恵まれた結果だと思うのですけれども、大学でもやはり日本一はいいなと改めて感じさせて頂きました。僕はスポーツをやる以上日本一を目指さないと意味はないと思うので、社会人でも日本一、もし主将をやらせてもらえるなら社会人でも主将として日本一を獲って、「優勝請負人」というワードが似合うようなプレイヤー、Mr社会人になれればよいと思います。あとは個人的な目標なのですが、最後は慶應の監督としてもう一度神宮の舞台に立つことが出来ればこれほど幸せな野球人生はないと思っていますので、そこも少し頭に入れながら、まだまだ未熟ですが頑張っていきたいと思います。

 

ーー最後に応援している塾生にむけてメッセージをお願いします

日頃より体育会野球部の応援ありがとうございます。少しでも体育会の選手の活躍や勝利がみなさんのモチベーションになっていれば、それはこちらとしてもとても嬉しいことですし、そういったプレーを皆さんに見せられたらなと思います。コロナが収まったら是非神宮球場に足を運んでより一層野球部の背中を押してくれたら野球部員は嬉しいと思いますので、今後ともよろしくお願いします。

(吉浦颯大)