法務省司法試験委員会は9月7日、今年度の司法試験合格者を発表した。今年度は最終合格が1421人(前年度比29人減)、受験者3424人(同279人減)で、共に法科大学院修了生の受験が始まった2006年度以降では、最少を更新した。慶大法科大学院からの受験者227人(同24人減)に対し、合格者数は昨年度と変わらず125人、合格率は55.1%(同5.3ポイント増)であった。慶大は法科大学院別合格者数で首位を奪還し、同合格率で、愛知大、京都大、一橋大に次ぎ4位となった。なお、予備試験通過者の合格者数374人(同4人減)で、合格率は93.5%(同4.1ポイント増)であった。

今年度の慶大の結果について、法務研究科委員長の北居功教授は、「合格者数が多いだけでなく、合格率が55%を超え、全国屈指の実績になったことは大変喜ばしい」と語る。慶大法科大学院の高い教育力が数字に表れた。

北居教授
(写真=提供)

慶大法科大学院では、ソクラテスメソッドに基づき、少人数で教員と学生が対話する授業を展開。司法試験で必要な8科目は基本的な知識のインプットにとどまらず、判例の限界にも触れながら包括的に学ぶ。また、選択科目が多岐にわたるのも特徴だ。すべて英語で行われる授業や金融分野の最先端の講義などがあり、将来、法律の専門家として各分野で活躍するための土台を形成できる。

こうした学びを経て取得する、法科大学院修了の博士号の学位は、「社会的に高く評価されるもの」と北居教授は力説する。特に、海外で活躍するには、博士号の価値が重視されるという。

一方で、昨今の司法試験界では、法科大学院を経由せずに法曹資格取得を目指す予備試験が主流だ。この制度について、「一発勝負では優秀な法曹が育たない懸念された、かつての司法試験の反省が生かされていない」と北居教授は指摘する。

予備試験への対抗意識を掲げた制度として、学部3年・法科大学院2年で司法試験合格を目指す「法曹コース」が始まったのが一昨年。現在の学部3年生は今年初めてこの制度を利用し、法科大学院を受験することになる。在学中合格を目指すには、学部時代から知識を定着させておくことが不可欠だ。慶大では、法学部に設置されている法務演習を十分に活用することで、大教室の講義で学ぶ法律学の理解を深め、実践的な力を養える。

慶大法科大学院に求める人材について、北居教授は、「法律は対話を大切にする学問。紋切り型の考え方や記憶力で勝負する人ではなく、一歩踏み込んで、何でこうなるのかを考えながら学ぶ人に来てほしい」と語った。

どんなルートで受験しても、司法試験が最も難関な国家試験であることに変わりはない。法科大学院は司法試験の先まで考える教育機関として、国際化が進む世の中でますます期待されるだろう。

菊地愛佳