経済学部ゼミナール委員会は2月5日、不具合が多発したことを受け、今年度から導入された入ゼミ登録新システム、「ゼミカン」の運用を中止した。導入を検討していた商学部ゼミナール委員会も経済学部での運用中止を受け、導入しない方針を発表した。「ゼミカン」の利用には、他用途にも運用可能なSTAR システムへ先に登録しなければならない仕組みになっていたこともあり、入ゼミ希望者からは疑問や不満の声が上がっていた。

塾生新聞では、ゼミカンシステム導入から運用中止までの経緯を詳細に取材した。その結果、さまざまな新事実が明らかになった。

 

導入の経緯

かねてより問題視されていた入ゼミ希望者の個人情報保護のため導入が決定された新システム「ゼミカン」。これまでの入ゼミ形態の問題点について、経済学部ゼミナール委員会は本紙の取材に対し、「過去に具体的な問題が発生したとは聞いていない」とした上で、次のように説明する。

「ゼミカンを慶應義塾 Fin-TEKセンターよりご提案いただいた際には、例年成績表などの書類を Gmail 上でやり取りしていることが個人情報保護の観点から問題であるとご指摘を受けました。また一部のゼミでは、合格者発表の際に、SNS上に合格者の学籍番号を掲示されていますが、こちらも不適切であると考えております」

こうした問題点もあり、個人情報保護のため、慶應義塾Fin-TEKセンターより導入の提案を引き受けたという。「当委員会もかねてより、入ゼミにおける個人情報保護に関する課題意識があったので、導入を前向きに検討しました」と経済学部ゼミナール委員会。

昨年7月ごろから経済学部ゼミナール委員会と慶應義塾Fin-TEKセンターが複数回Zoomで打ち合わせを開き、「10 月に経済学部学習指導主任の駒形哲哉先生にゼミカン導入のご提案を差し上げた」(経済学部ゼミナール委員会)という。

 

経済学部ゼミナール委員会、慶應義塾Fin-TEKセンターとゼミカン開発元の株式会社IGSの三者からの提案を受け、まず経済学部は学部執行部で審議を重ねた。その後、11月26日の経済学部会議(いわゆる教授会)で「ゼミカン」の導入審議が開始され、12月17日に正式に導入することが決定した。経済学部ゼミナール委員会では入ゼミ希望者を対象として、同日17日にゼミカンおよびSTARシステムの説明会を実施している。

 

十分なテストランなく運用へ

運用中止の引き金となった不具合に関して、学生からは「説明会の実施時期からして、あまりにも急な導入ではないか」、「ここまで欠陥が多いと、不具合発生は事前に予測できたはずだ」などの声も聞かれた。

このことについて経済学部は本紙の取材に対し、導入を決定した主体として、開発のスケジュールの見通しに問題があったことは認めざるを得ないとした上で次のように説明する。

「ゼミカンのシステムの完成が予定より遅れ、十分なテストランなくして、実際の運用に移らざるを得なかった。そのため、STARの本来の機能が必ずしも発揮されなかった可能性があることは否めない」

経済学部学習指導主任 の駒形哲哉教授は、自身の認識として、「ゼミカンは基本的に前年末までには完成していたが、教員側の登録に関し、STARアプリを使わない仕様に急遽変更することになった。その変更作業の分、時間を要してしまい、結果的にテストランの時間が不足してしまった」と説明する。

駒形教授によれば、1月22日までにゼミカンがシステムとして完全に完成し、運用を開始したのは1月28日だ。A日程の登録期間開始日(2月1日)の4日前ということになる。