《新メディア時代を生きる》第2回 失われた論点 若者の光となるメディアとは お笑いジャーナリスト・たかまつななさん

メディアは社会を良くする道しるべ

――これまでさまざまなメディアに携わってきたと思いますが、それぞれの活動の中で感じたメディアの特徴はありますか。

もちろんそれぞれのメディアに特徴があって、出張授業とNHKとYouTubeとを比べるとわかりやすいですかね。出張授業でも本当は学術会議問題や各政党の方向性というような具体的な政治事例を扱いたいのですが、もし教育委員会や議会で取り上げられたら、問題になることは容易に想像がつきます。制約がある中でのものづくりはもちろん大事ですし、だからといっていま行なっている出張授業に意味がないということはまったくありません。出張授業はYouTubeより丸くなっていると考えられると思います。

NHKはものすごく信用されているメディアなんですよね。NHKが報じると、国会で取り上げられて制度が変わったり、他のメディアが後を追って報道したりします。あることについて一つのメディアが取り上げただけでは意味がなく、他のメディアが後追いすることが大事なので、そのシステムがNHKには備わっていることが特徴だと思います。なので、NHKが若者に見られていないから意味がないということはまったくないです。

一方で、NHKはとても批判の的になりやすいので、なるべく中立でなくてはならないし、調査にも時間がかかります。たとえば、新しい制度が導入されそうなときに、こういうことが問題になりそうですよということは言いづらくて、数年後に実際に問題になってから報道するのが主流です。というのもまだ起きてもいない問題を、問題になりそうだと事実として報道するのが難しいんです。

YouTubeであれば、すぐに自分の問題意識はこういうところにありますと言うことができます。たとえ事実としてその問題があがっていなくても、私はこう予想しますということは、自分の意見なので問題ないんです。事実だけで語っていくのは難しいけれど、メディアとして意見を言うことは怖いものです。メディアの役割の違いかもしれませんが、私はこのように感じていますね。

――たかまつさんが今のメディアに必要だと考えることはなんでしょうか。

PV至上主義※₂にならないということ、もっと啓蒙していく、論点を提示していくということが大事だと思います。私たちは社会問題を解決するためにいるんです。中でも、取材するということは特権で、プロフェッショナルなことだと思います。実際に問題が起きたあとに、こういうことが問題ですと言うことよりも、未然に問題が起きないようにしなければいけないはずです。そのために、メディアは論点の設定から逃げてはいけないと思います。

※₂ページビュー至上主義:ネットメディアにおいて、アクセス数を最優先に考え、ネットの検索に引っ掛かりやすいことや、見る人を惹き付けることを過度に重視すること

私が見ればこの報道は官邸に忖度しているな、などというようなことはわかるけれど、一般の人から見たら、どこが忖度しているのかわからないですよね。メディアの中でも忖度している人なんてほんとにわずかだけれど、一つそういう報道があるだけでメディア全体の信用が失われます。信用を失わないためにも、若手がもっと残るためにも、メディアが本当に必要だと思うことをしてほしいです。

――最後にたかまつさんにとってメディアとはなんですか。

やはり、社会を良くしていく光のようなものですかね。コンパスのような、こっちですよと道を示して、新しい視点や考える材料を私たちに与えてくれるものだと思います。自分で取材するよりも、誰かがまとめてくれた方が圧倒的にはやいので、どのテーマを取材するか、どのように伝えるかにメディアや記者のセンスが表れると思います。

 

 

今回は記者が以前動画を見た際に感銘を受けたたかまつななさんに話を聞いた。前回に引き続き、テレビ局をやめ、YouTubeへと発信の場を移した方への取材となった。たかまつさんのYouTubeにはさまざまな動画があがっているので、きっと皆さんの心に残るものがあるだろう。

情報を発信する人から見たメディアの形を知ることで、受け取り手の私たちの意識も変わるに違いない。問題提起をしづらいメディアとしやすいメディア。それぞれの特徴を理解しながら、情報を収集し、自ら行動することをやめてはならない。これから私たちが生きていく社会を明るくするための道しるべとして、メディアを賢く利用できる人になりたい。

 

(古田明日香)