[東京六大学野球レポート]法大戦・エースと4番

9月26日 慶大4-2法大 ○
9月27日 慶大5-2法大 ○

「これで勝ち点を落としたらもう(優勝は)ないんで、勝てて良かったです」(漆畑哲也主将、4年)
「(2連勝という)結果については大満足」(相場監督)

今カードは春季リーグ戦を制し、その後の全日本大学野球選手権も勝ち抜いて日本一にも輝いた法大と対戦。2週間前の立大戦で勝ち点を取れなかった慶大は背水の陣であったが、結果は2連勝。春季は善戦しながら連敗(2―3、1-3)した相手に雪辱を果たした。

4番・伊藤隼太が打線に与える安定感

加賀美、二神の先発に加え、リリーフ陣まで好投手が揃う法大だったが、2試合とも10安打ずつと慶大打線が打ち勝った。大きな原動力となったのは、春季リーグでは規定打席に2打席足りなかったものの打率.345と好成績を記録し、今季から4番に座る伊藤隼太(2年)だ。

1戦目、先制本塁打を放ち笑顔でホームインする伊藤隼太(左)。伊藤は2試合とも重要な場面でヒットを放った。
1戦目、先制本塁打を放ち笑顔でホームインする伊藤隼太(左)。伊藤は2試合とも重要な場面でヒットを放った。

伊藤は1戦目の第1打席で先制のホームラン。第2打席は追加点のきっかけとなる二塁打を放った。残りの打席は左直、二直と凡退したが、ヒット性の鋭いライナーが野手の正面を突いたいい当たりだった。

 

「今は相手どうこうより自分の非常にいい形で打てている」 (伊藤・1戦目後のコメント)

伊藤の好調さを物語るのは2戦目4回の第2打席、カウント2-2と追い込まれてから際どい外角の球を連続で見逃して選んだ四球だ。

 

「相手の二神投手はキレも良く、コントロールが非常にいいピッチャーですが、自分の間合いでボールが見えていたので、際どいコースでも余裕をもって、自信をもって見逃せました」

6回の第3打席は安打の山口尚記(3年)が盗塁し、無死2塁の場面。相場監督がタイムを要求し、伊藤に歩み寄った際には「お前が監督ならどうするかと聞かれ、右方向に打つ最低でも進塁打を打つ自信があったので打たせていただきました」(伊藤)。外角の球を狙い打ちし、2点目の適時打をセンター前へ運んだ。

「4番がしっかりすると打線に軸ができ、いい流れになる。そういう意味で(伊藤は)よく頑張っている」 (相場監督・2戦目後)

打線に「軸」ができた今季の慶大は開幕から5試合、投手以外は不動のオーダーで臨めている。
「繋がりがいいので敢えて変える必要もない。それぞれが自分の役割を果たせている。非常にいい形になってきた」 (相場監督・2戦目後)

伊藤が調子を維持できるか否かが慶大打線全体に与える影響は非常に大きいのは言うまでもない。残り3カードとなったリーグ戦。伊藤には4番の責任を最後まで全うしてもらいたい。

エース連投、相場監督の「賭け」
2試合とも先発した��林伸陽。どちらも勝利投手となり、自己最多タイのシーズン3勝に早くも並んだ。
2試合とも先発した中林伸陽。どちらも勝利投手となり、自己最多タイのシーズン3勝に並んだ。

3点リードで迎えた1戦目の7回裏。法大の攻撃が残り2イニングあり決してセーフティーリードがあるとは言えない場面で、相場監督はそれまで1失点しかしていないエース・中林伸陽(4年)に代打を送った。結局、慶大はこの回満塁のチャンスを作るが無得点に終わり、8回からは福谷浩司(1年)が登板。しかし、福谷は4番・松本哲郎に被弾し、次打者に死球を与えると小室潤平(4年)にスイッチ。小室は、8回の後続を断ったものの、9回には1死2、3塁と一打同点のピンチを招き、エース降板後はピンチが続く薄氷の勝利となった。
勝利をベンチから見守った中林は「最後はかなり心配しました。先発した以上は完投したいですけど、監督が決めることなので……」としたが、相場監督の投手起用の意図は翌日わかることとなる。

2戦目の先発メンバーの発表。「……9番、ピッチャー、中林君」。この試合は立大戦で先発した竹内大助(1年)か春の2戦目を任された小室潤平(4年)が登板するものと予想していたスタンドからはどよめきと他の選手よりも大きな拍手が起こった。「中林は昨日投げなかったのか?」「いや、7回まで放ってたよ」という会話が3塁(慶大)側のスタンドの所々で聞こえた。その中では法大の裏をかく「奇襲」という見方が大方だったが、

 
「立教戦が終わった時に、監督から法政戦は全部(先発で)行ってもらうと言われました」 (中林・2戦目後)
「中林には3連投行くぞと言ってあったので(1戦目は)それを踏まえた投手交代でした」 (相場監督・2戦目後)

 
つまり、1戦目の交代は翌日の先発を見越してということであり、完投しなかったのも、2戦目の先発も全て「予定通り」であったということだ。

当然、この試合でも「中林3連投」が前提の采配となる。6回の裏、中林が3本の安打を浴び、2-2の同点とされると、中林から始まる7回の攻撃で代打に竹内一真(3年)が送られた。竹内は起用に応える安打を放ち、2番・渕上仁(3年)の適時三塁打で決勝のホームを踏んだ。残りの3イニングは小室。不安定だった前日とは打って変わって9人を完璧に抑え、ゲームを締めた。 

「中林が6回を1点で抑えたことが勝因の一つ。小室は期待以上のピッチングをしてくれた」 (相場監督)

 

 

もし、一つ間違えていずれかの試合を落とし、2日で194球を投げた中林が3連投となったら勝ち点を奪える可能性は一気に下がっただろうから、2連勝で終えてよかったというのが相場監督の本音ではないだろうか。エースの連投は両刃の剣の大きな賭けであったが、「法政には絶対に勝つ」という相場監督の執念が選手に伝わったからこその勝利だと言えるかもしれない。この勝利で勢いに乗れるか。今週末には東大戦が控えている。

 

文:湯浅寛
写真:湯浅寛
取材:湯浅寛、飯田拓也、岩佐友