8月1日、就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが、サイト利用者の個人情報を本人の同意なしに人工知能(AI)を利用して「内定辞退率」を予測、そのデータを企業に販売していたことが分かった。

リクルートキャリアは、リクナビを利用する就職活動中の学生のサイト閲覧履歴などをAIで解析し、5段階で「内定を辞退する確率」を算出。そのデータを、本人への十分な説明なしに大企業に販売していた。データを購入した企業には、トヨタ自動車やりそなホールディングス、京セラなどの大企業も含まれていた。

 

本人不在で情報が行き交う実態とは

この問題について、慶大法務研究科の山本龍彦教授は「報道では、主に『就活生本人の同意なく個人情報が第三者の手に渡った』ことが問題視されている。だが、本人の知らないところでサイトの閲覧履歴がプロファイリングされ、採用に使われたことも大きな問題だ」と述べる。

明確な同意のない個人情報の第三者提供が違法とされている一方、本人の同意のないプロファイリングは今のところ違法ではない。しかし、学生にとって不利益となる場合もあり、今後何らかの規制がされるべきだと話す。

サイトの閲覧情報など、応募者本人のものだと確証が得られない、正確性の担保されない情報を、採用という重要な決定に使う企業も問題だと教授は指摘する。情報が本人のものでなく、不正確であったとしても、本人には訂正の機会が与えられないのだ。就活生が不条理な締め出しを受けないよう、採用プロセスの透明性を確保し、情報が間違っていたら訂正するなど本人が介入できるようにする必要があるという。

 

先天的要素が合否を決める時代へ

山本教授は、「就活そのものにおいても、AIの採用への利用が進んでいることも認識すべき」と話す。ここ2、3年の間に、友人やインターン先のメンターに応募者を評価してもらい応募者の普段の様子を答えてもらう「GROW360」や、質問に答えた動画を送る「HireVue」などの、AI分析を用いた採用が普及しつつある。

このようなサービスは回答結果だけでなく、答えるときの身振り手振りや目の動き、さらには回答にかかった時間なども分析の対象とする。面接の「取り繕った」受け答えからは分からない、素の自分が可視化されるのだ。そこには、無意識的な振る舞い方のような、先天的な要素が大きく影響するものも含まれる。

面接以外の普段の様子を見られることによって、学生は普段から就活を意識して生活しなければならなくなる。本人がコントロールできない要素に邪魔され、今までの努力が十分に反映されなくなる可能性も考えられるだろう。その一方、面接で失敗した場合にも、本人の実力が反映された正当な評価が下されやすくなるともいえる。

このように、AIプロファイリングの功罪はまだはっきりしていない。山本教授は「プロファイリングの利活用が広がっていることを認識するとともに、場合によっては『これはおかしい』と声をあげ暴走を防ぐ必要もある」と語った。

(髙木瞳)