慶應義塾は2008年度収支決算で、経営指標の一つである消費収支差額が269億円の支出超過になったことを明らかにした。昨年秋以降の世界的な金融危機による株価の大幅な下落と急速な円高の影響を受け、義塾が保有する有価証券の時価評価が下落したことが主な原因だ。
2008年度決算資料によると、2008年度期末において保有している有価証券の時価評価が535・2億円下落し、そのうち、評価が著しく下がったものを期末保有有価証券評価損として169・6億円を計上した。また、比較的下落率が低かったものを貸借対照表の注記欄に有価証券の時価情報「含み損」として356・6億円と記載。昨年の期末含み損225・5億円を大きく上回った。
リスクが伴う有価証券に投資した理由を本年6月に着任した財務担当常任理事の清水雅彦氏は「物価が上昇した場合の資産価値下落に備えて投資をするべきである。運用収入を必要以上に増大させるつもりはない」と話す。インフレで金融資産の価値が低下した際、学費の値上げなどに踏み切らずに済むよう、インフレ回避を目的とした投資だった。
清水氏は「安定的な投資が基本方針である。しかし、今回の金融危機は急激かつ大規模であり、予測を上回るものであっただろう」と答えた。義塾に限らず、金融危機の直撃を受け、損失を出した学校法人は多い。
また、大幅な損失を出したものの、学生生徒納付金や医療収入などの帰属収入は着実に計上されており、運営に支障をきたさないだけの資産はある。
義塾の資産運用は財務担当常任理事、経理部長、資産運用担当課長など塾内の関係者からなる運用委員会によって、運用規定に従って行われる。「ある一定の安全な範囲内での運用は、最近の市況ではやむをえない。今回の経験を生かし、今後資産運用をする際に、安全な投資かどうかを見極めたい」と清水氏。近日中に新たな運用規定を取り決め、より安全な資産を中心とした運用を進める方針だ。