企画

《日本の夏、手作りの夏。》懐かしいビー玉の栓と瓶の容器 夏の粋、ラムネの奥深さ

神作一明さん

人々でにぎわう夏祭り。とある軒先で足を止め、冷たい1本の瓶を買う。シュポン! ビー玉と炭酸による開栓の合図がして、キンキンに冷えたそれをグッと飲む。はじける炭酸に程よい甘味と酸味。これぞ夏の粋、ラムネである。

「そもそもラムネとは、『炭酸飲料を入れた瓶を、ビー玉で密栓したもの』のこと。瓶と炭酸飲料の組み合わせなら何を詰めようが自由で、その点でサイダーとは違うんです」

こう語るのは、隅田川沿いの街、東京・吾妻橋でラムネ製造元の興水舎を営む神作一明さんだ。神作さんによれば、ラムネの原液は各工場で香料と酸味料の比率が異なるため、それぞれのラムネで味が違うのだという。

ラムネの大きな特徴はやはり密栓の方法と瓶の容器にある。ラムネの密栓は、特殊な加工を用いず、物理的な力だけで行われている。ラムネ原液を入れた瓶に炭酸ガスを入れて、瓶を勢いよく逆さまにすると、中の炭酸の圧力でビー玉が外に押し出される。これによってふたが閉まる。

瓶にあるくびれは、炭酸水を入れてからビー玉で栓をするまでの工程を短くするためのものだ。こうすることで、密栓までの間に中の液が荒れることを防げる。また、栓も含め容器をすべてリサイクルできるため、地球にとても優しい。興水舎では、長持ちすれば10年、20年と再利用し続けるのだという。

ラムネ業界は法律によって大企業は進出できず、中小企業による独占的な生産が認められているが、そう安定した商売ではない。神作さんが商売を始めた60年近く前には、東京だけでも1‌0‌0軒くらいのラムネ屋があったが、現在では7、8軒しか残っていないという。興水舎もラムネだけを主に製造しているわけではなく、それだけで経営ができる企業は全国的に見ても少ないそうだ。

「ラムネというのは、『飲料水の化石』のようなものです。もうけるためではなく、惰性で商売をしているのに近い」

興水舎は今年で創業94年を迎える。「1‌0‌0年まではなんとか続けたい」と神作さん。隅田川には夜空に満開の花が咲く季節。そのお供にキンキンに冷えたラムネはどうだろうか。

(曽根智貴)

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