「慶應に行けば人生が変わる」

ある教師と出会い、この言葉を信じ、どんなに笑われても必死に努力し、人生を変えたひとりの女性。学年ビリのギャルだった小林さやかさんに、1年で偏差値を40上げて慶大に合格した「その後」を聞いた。

中3の頃、学校でタバコが見つかり無期停学処分になった。「人生で一番の失敗だった」と振り返る。「なぜタバコがバレたかわかるか。友達がおまえの名前を売ったんだ。だからおまえも一緒にいた友達の名前を言え」。先生の言葉に失望した。大人はなんて卑怯なのだ、と。

高2になり、さやかさんは運命的な出会いを果たす。塾講師である坪田信貴先生との出会いである。面白い大人がいることを初めて知った。「刺激のある人は話していてワクワクする。面白い人が沢山いる大学に行きたい」。それが慶大だった。

その後、1日に15時間勉強するなど並々ならぬ努力の末、見事慶大総合政策学部に合格。なぜここまで頑張れたのか。

その理由は母の口癖にあった。「ワクワクすることを自分で見つけられる人になってほしい」。さやかさんにとってそれが勉強だった。少しずつ色々なことを知り、世界が広がっていく感じがした。「勉強でなくても、スポーツ、アート、何の分野でもいいけど一生懸命頑張って努力し続けることが宝になる」とさやかさんは話す。

入学後もワクワクすることを求め、積極的に行動した。大学の外の世界も見てみたいという理由から、大学1年生でインターンに参加した。「大学生は失敗をして学べる最後のチャンスだから」。失敗を成功に変える方法はすでに知っていた。

さやかさんにとってのターニングポイントは接客業のアルバイトだった。店員と客が名前で呼び合い、連日たわいもない話をするサービス業に魅せられた。人を楽しませる幸せを知り、ウェディング関係の会社に就職する。就活とは、自分が今まで学んだことを社会にどう活かせるか、どんな世界で生きていきたいか、を考える時間だという。

憧れだった慶大での大学生活を振り返ると「慶應の凄さは卒業してからわかる」という坪田先生の言葉通りだった。慶大で出会った友人はそれぞれ様々な業界に進んだ。色々な分野で活躍する仲間との出会いは宝物だ。

そんなさやかさんにも後悔していることがある。「慶應の教授は凄い人ばかり。専門や実績を調べて授業を選び、教授ともっと話せば良かった。もう一度大学に行きたい」

「受験は一つの成功体験で過去のもの。大切なのは今の環境をどう楽しむか」。そう話すさやかさんは現在、母親向けのセミナーや、様々な経歴を持つ大人と学生との交流イベントを開催している。「ワクワクする大人と出会える機会を、私が作ってあげたい」

他にもフリーランスとしてクラウドファンディングや講演、保育園の創設など様々な活動にいそしむさやかさん。「人生は出会いがすべて。常にワクワクし続けていたい」。この想いが全ての原動力だ。

かつてビリギャルと呼ばれた女性は、人一倍出会いを大切にし、今もなお進化し続けている。

(松尾美那実)