今年度のイグ・ノーベル賞の受賞者が9月15日に発表され、そのうち「生物学賞」を北海道大学の吉澤和徳准教授、ブラジルのロドリゴ・フェレイラ氏、スイスのチャールズ・リーンハード氏とともに慶大商学部の上村佳孝准教授が受賞した。慶大関係者の受賞は実に22年ぶりとなる。
 
今年度の生物学賞受賞理由は、「雄と雌で生殖器の形状が逆転している昆虫(トリカヘチャタテ)の存在を明らかにしたことに対して」。研究の発端は、洞窟生物学者であるフェレイラ氏がブラジルの洞窟でチャタテムシの一種を発見したことだった。この種を特定するため専門家のリーンハード氏に送ったところ、新種だと確認された。そのことを報告した論文が吉澤准教授の関心を引き、研究が始まった。もともと昆虫の交尾器を研究していた上村准教授は、吉澤准教授から声をかけられ、研究に参加することになった。
 
吉澤准教授によってこの新種は「トリカヘチャタテ」と名付けられた。これは姉弟がそれぞれの性別を偽って育てられるという平安時代の『とりかへばや物語』に由来している。研究する過程で明らかになったのが、この種は他のあらゆる昆虫とは違い、生殖器の形状が雄と雌で真逆になっているということだった。生物学的には精子を作るのが雄、卵を作るのが雌と定義される。雌の生殖器は他の動物の雄のような伸縮可能な細長い形をしており、逆に雄の生殖器にはくぼみがある。雌が雄の上に乗り、精子を受け取ることで交尾が行われるということを研究チームは明らかにした。
 
3年前に発表された研究論文は海外で反響を呼んだものの、上村准教授は「まさかイグ・ノーベル賞をとるとは思わなかった」と語る。研究チームは現在、トリカヘチャタテの生態の更なる解明や遺伝子での親子判定実験などを準備しているといい、飽くなき探求はまだまだ続いている。