大学教員が語る「ITネットワーク」 総合政策学部教授 國領二郎

コンピューターネットワークは、社会の中で組織が効率よく活動できるようにする為、必要とされる情報技術です。ネットワークが進化すれば、効果が大きな分野では、各地に分散した情報を体系化し、合理的な組織運営が可能になるのです。
例えば、医療現場での診療代や処方の状況が瞬時に分かる様なネットワークが病院内外で形成された場合、患者へより効率的な対処が可能となります。またアパレル業界でも、店舗毎の在庫を一元管理できれば、在庫調整が円滑に進み、無駄な経費を削減できます。
昔からあるモノでは、「みどりの窓口」が典型的な代表例です。このシステムが誕生したことで、鉄道運輸のシステムは大幅な進化を遂げました。この様にコンピューターネットワークは、現代の情報社会で、欠かせない存在となっています。
しかし、現状には改善の余地がまだまだあると私は思っております。コンピューターネットワークの活用に、現実社会では未だに人間同士のコミュニケーションが対応していない点があります。このまま技術面だけが進行しても、効果が発揮されるとは思えません。この点は、今後も大きな課題となると考えております。
ところで、私は最初からこうした情報技術に興味があった訳ではありません。経営の方から入ったのです。父の仕事の関係で、子供の頃にニクソンショック等の海外情勢を目の当たりにした私は、次第に経営に興味を抱き、東京大学で経営学を学びました。
そんな中、大学2年だった1980年の夏、アイセックというサークルの関係で渡米し、某石油会社でインターンシップを経験しました。この時、アメリカの企業が、日本を凌駕する様な巨大情報網を持ち、世界中にアンテナを張っている姿を目の当たりにし、企業経営での情報技術の重要性を肌で実感しました。それが下で、商社や銀行等ではなく、当時の日本電信電話公社(現在のNTT)に入社しました。
次の転機となったのは、1987年にハーバード大学へ社費留学した時。大学側から誘っていただき、最終的には博士号まで取得しました。その時から大学で本格的に情報技術を研究したいと思い始め1993年にNTTを退社し、慶應のビジネススクールへ転職しました。10年間ここに務めた後、情報技術をより深く研究したいと思い、より環境の整ったSFCへ籍を移し現在に至っております。
さて、特にSFCや矢上以外の学生の皆さんの中には、ITというものが遠い存在に感じられる人もいるかと思われます。しかし、本基は「0」と「1」の2つの数の組み合わせです。また、技術や運用など仕事も幅があり、決して難しいものではありません。ITの分野を目指す人は、まず簡単なプログラミングをやってみる事をお勧めします。そこでアルコリズム(論理的な基本設計)を養って下さい。
例えば、時計を作るのにも、単純な計算の組み合わせで実現します。計算機の動作に同期があるのを利用して、同期を数えながらまず1秒を認識させます。後は60秒たったら時間を1分進め、60分経ったら1時間進め……という風に組み立てていく。これだけでも大いにプログラミングの勉強になります。
最後になりましたが、新入生の多くの方々にとって18歳から22歳の間は、人生で最も密度の濃い4年間になります。勉強でもアルバイトでも、サークルでも恋愛でもいいから、とにかく何かに対して一生懸命に生きて欲しい。それが、後で貴重な財産として役に立ちます。これから4年間、どうぞ頑張って下さい。
(大塚哲)

國領二郎  慶應義塾大学総合政策学部教授・SFC研究所所長。1982年東京大学経済学部経営学科卒業、日本電信電話公社を経て1992年ハーバード大学で経営学博士号を取得。IT技術を生かしたビジネス・社会モデルの構築の研究を専門とし、『オープン・ネットワーク経営』(1995)に対し、第11回テレコム社会科学賞他。我が国の情報通信の発展に多大な貢献をしたことなどに対し、2005年、2008年の両年、総務大臣表彰を受ける。