総評

 混戦となった東京六大学野球春季リーグ戦を制したのは、二季連続で法政大学だった。今季の法大は、とにかく『個の力』が際立っていたと言えよう。主将の大引は大学通算二度目の首位打者(打率5割、立大・小野寺と同率)を獲得。さらに、エース・平野貴は6勝を挙げる大車輪の活躍を見せた。野球ではチームプレーが重要だ。だが、ベストナインにそれぞれ満票で選ばれたこの二選手を始めとして、その他にもタレントの揃った法大の優勝は、当然の事のようにも思えてくる。

 片や、相場新監督のもと、リーグ戦優勝を目指した慶大野球部。しかし、終わってみれば勝ち点3の三位と振るわなかった。
 優勝を逃した最大の要因は、まず打撃陣の勝負弱さにあると見る。今リーグ戦序盤の大一番といわれた慶法一回戦では、2点ビハインドの六回に無死満塁という千載一遇のチャンスを迎えながら無得点に終わり、この試合を1―5で落とした。他にチャンスを潰した例を挙げていけばきりがない程の深刻さだった。

 一方で、先発投手陣にも課題が残った。加藤は先発した試合の立ち上がりに安定感を欠き、試合の中でチームにリズムをもたらせられない事が多々あった。今季から先発転向した守口も、スタミナ不足から早々に降板するケースが見られた。投手陣には早急な体力アップという基本事項が求められる。

 ただ課題が多かった分、収穫も少なくなかった。ピッチャーでは、二番手以降の中継ぎ陣の安定感が光った。特に二年生の相澤は慶大には貴重な右腕で、伸びのあるストレートなどを武器に7試合に登板して自責点0という素晴らしい結果を残した。
 打撃陣も、個々の結果は残っていた。瀧口は打率4割、11打点で初のベストナインに選ばれた。また宮田は「ボールを引きつけることを意識した」バッティングで、昨季に続いて3割を越える打率をマークした。そして中軸を打つ金森宏・岡崎は、昨季から続いていた不調をリーグ戦後半で完全に脱し、こちらも3割前後の打率を残した。(それだけに前述の『勝負弱さ』が悔やまれるのだが。)

 春季リーグ戦は終わったが、9月には新シーズンが幕を上げる。これからの3ヶ月は、長いようで短い。 露呈された弱点を克服するために、越えられなかった法・早の壁を越えるために。慶大にとって勝負の夏が始まる。

(羽原隆森)