一日三食をとることが難しい子、両親が共働きのため夕食を一人で食べている子、など「子どもと食」の問題は山積している。「子ども食堂」という活動を耳にしたことがあるだろうか。このような問題に地域の輪をもってアプローチする取り組みだ。「石神井ゆうやけ子ども食堂」の運営に携わる、鈴木秀和さんと佐藤崇さんに話を聞いた。

「石神井ゆうやけ子ども食堂」の誕生は、地域の声がきっかけだ。「なゆたふらっと」という不登校児中心の居場所づくりの活動拠点で始まった。毎月2回開かれ、平均30人ほどの子どもと大人が食卓を共にしている。鈴木さんと佐藤さんを含むメンバーの一部が、不登校児以外にも支援を必要とする子どもがいるということに気づき、子ども食堂を始めることを決意した。趣旨に賛同する多くの人の協力を得ながら、1年以上活動を続けている。


子ども食堂を運営するメンバーは全員がボランティアだ。教師、牧師、大学生、地域のお母さんなど幅広い人々が活動に関わっている。

料理に使う多くの食材も、地域の人々の協力を得ている。区民農園の利用者から採れた野菜を分けてもらったり、活動に興味をもった人からの寄付を使ったりして調達している。近隣の子ども食堂と食材を融通しあうこともある。

分け合うのは食材だけではない。子ども食堂に来る人々にとって食事は毎日のことだが、同じ場所で毎日子ども食堂を開催することは難しい。そこで近くの食堂を紹介し、「今日はうちでやっているけど、明日は別でやっているよ」と声をかけ、他の子ども食堂と連携を図ることもある。

子どもにとって、生活の中心となる場は学校だ。しかし近年、家庭環境は多様化し、学校は一人一人の親への面談など「個々」に合わせた様々な対応を迫られている。するべきことが非常に多いのだ。そのような状況で、地域のするべきことは、学校でどうしても漏れがちな、学習以前の生活サポートであるという。

子どもたちにとって、子ども食堂とは単なる食堂ではなく、「居場所」である。学校でも家庭でもない「第3のスペース」として、地域が居場所を提供することは子どもたちを安心させる。このような活動が、子どもたちの健やかな成長に繋がる。

最後に佐藤さんは「何事でも大切なのは一度きりで終わらせないこと。子ども食堂であれ他の活動であれ、継続してこそ見えてくるものはたくさんある」と語った。

取材日の献立はカレーライス。地域の人々の笑顔と、どこか懐かしいカレーの匂いが、石神井の街角を今日も明るく照らしていた。
(青砥舞)