学部長に聞く学生に読んで欲しい一冊 ~後編~

秋も深まり、冬の気配さえ感じられるが、今月号でも先月に引き続き、慶應義塾大学の各学部の学部長に、読書の秋に学部生に読んでほしい本を紹介して頂いた。今回は、看護医療学部、総合政策学部、文学部(五十音順)である。質問内容は以下の通り。
①推薦の理由②本の好きな一節③本のキャッチコピー
(菊田航、山本理恵子)



総合政策学部 河添健学部長より

「The Japanese」
Edwin O. Reischauer著 / C.E. Tuttle


①私の読んだ数少ない数学書以外の本から推薦する。私は数学者なので、数学書を推薦したいのですが、「総合政策学部の学生に読んで欲しい一冊」となると、推薦しても読んでくれないかも。そこで私の読んだ数少ない数学書以外の本から本書を推薦します。今の日本、何か変に感じませんか? 原発・安全保障・難民対応・人権・大学ランキング・データ改ざん、などなど。英会話能力は最低でもJapan miracleを起こした日本は何だったのか?この本を読んで今一度日本を見つめ直して国際的な視点で物事を考えられるようになってください。ライシャワー氏は日本の特異性を見抜くと共に、日本が将来、国際社会で大いに貢献することに期待を寄せています。期待通りになったと思いますか?

②最終章The Futureの冒頭部分『Any view into the future depends basically on the accuracy of one’s understanding of the past』。”accuracy”が大切です。

③マイルドヤンキーは読んではいけません。



看護医療学部  小松浩子学部長より

「サーバントリーダーシップ」
ロバート・K・グリーンリーフ著 金井壽宏監訳・金井真弓訳 / 英治出版


①「リーダーは苦手だ」と思う人は多い。私もその一人である。それでも、どの人も実勢において様々な状況でリーダーの役割を担う。「サーバント」つまり「奉仕」こそがリーダーシップの本質だと、著者グリーンリーフは説く。自らの良心に従い、より良い世界へと導くことを自身の責務と信じ、当事者の立場にたって常に心をくだく、サーバントとしてのリーダー像は、「等身大の自分でもリーダーとしてやっていける」と背中を押してくれる。迷ったときにぜひ手に取ってみて欲しい。

②本書の最終章〈心の旅〉には、希望が見えない時代を歩む、リーダーの本質が描かれている。「人間の完全性という尺度では、確信を得られないし、心の平安を得ることもない。不安を超えたところに約束がある。」と述べ、人間は常に動き、発展し、不確かで危険ですらある環境のどこにでも溶け込んでいく、正義、責任感、勇気が自分たちの性質としてあることを説いている。到達することは難しい道だが、めざすことはできると彼が言うように歩みたいものである。

③「等身大のリーダー」をめざすあなたに、正義と勇気がわいてくる手引書。



文学部  松浦良充学部長より

「本を読む本」(Mortimer J. Adler & Charles Van Doren, How to Read a Book: The Classic Guide to Intelligent Reading, New York: Simon & Schuster Inc., 1972.)
M・J・アドラー、C・V・ドーレン著 外山滋比古、槇未知子訳 / 講談社学術文庫


①文学部に限らず、すべての塾生の知的生活の中心は「本を読むこと」によって占められていることだろう(願望も込めて言っておく)。しかしレポートや卒論などの「書き方」への関心に比べて、「本を読む」という行為について考える機会は少ないのではないか。本書が提示する読書の四レベル(「初級読書」「点検読書」「分析読書」「シントピカル読書」)や原題は、いわゆるハウ・トゥー本であるとの誤解を生むかもしれない。しかし本書が提示する「本の読み方」にもとづいて本書を読めば本書の基盤に深い学問・学習論があることを理解できるだろう。

②「読むこと、聞くことには思考を必要としないから楽だと思っている人が多い。単に情報や娯楽のために読む場合は、それでもよいかもしれない。しかし、それでは積極的読書とは言えない。「発見」や理解のために読むときには積極的姿勢が必要である。考えることをなおざりにして積極的読書をすることはのぞめない。」「積極的な読書は、それ自体価値のあるものであり、それが仕事のうえの成功につながることもあるだろう。しかしそれだけのものではない。すぐれた読書とは、われわれを励まし、どこまでも成長させてくれるものなのである。」

③本の読み方を点検・反省するための一冊。