航空部 合宿に密着!!フライト支える空と地上の「連携」

機体の入れ替えはすばやく行う
機体の入れ替えはすばやく行う

「ケイオー21、出発!」管制塔の役割を果たすピストから掛け声が上がると、周りの部員も復唱する。「しゅっぱーつ!」。ランウェイ(滑走路)上を機体が鋼鉄のワイヤーに引っ張られてググっと動き出す。まもなく白い機体が青空に吸い込まれるように浮かび上がった。翼が風を切るヒュウヒュウという音が残る。上空を見渡すと、同じ場所で訓練をしている日大や東大なども合わせて10機以上のグライダーが青空の下を右へ左へ旋回している……。
11月22日。三田祭2日目のこの日、埼玉県妻沼町の利根川河川敷に出かけた。ここで塾体育会航空部が三田祭休みを返上して訓練を行っている。この日一発目の飛行は午前7時20分に行われた。教官が同乗し、機体性能や風を確認するチェック・フライトだ。その後、監督や教官らと共に整列が行われ、あとは日没までひたすら飛行訓練。
あまり注目されないが、塾航空部は学生団体としてはかなりの強豪とされている。たとえば2007年度の成績を見てみると、六大学戦では優勝。新人戦でも団体・個人共に優勝。全国大会では個人戦では優勝したものの、団体戦では早稲田の後塵を拝した。しかし、直後の慶早戦で早稲田に雪辱を果たすなど、「空の王者」の呼称に恥じない健闘ぶりを見せている。
ピストから滑走路を1㌔ほど進んだ場所に連れて行ってもらった。ここでは機体を引っ張るワイヤーを巻き取るエンジン(ウィンチ)を、微妙な半クラッチ加減で操作しているウィンチマンと呼ばれる人々が孤軍奮闘している。離陸場所やピストには多くの人々が集まるが、ウィンチは耳を劈くようなエンジン音と排気ガスのにおいに包まれた孤独な場所だ。
しかし、プロペラのような動力を持たないグライダーは、ウィンチの存在なくして飛行することは出来ない。ウィンチの操作を後輩に教えていた4年生の部員は、「機体が高度100㍍に上昇するまでが危険」と言う。機体が上昇しきる前にワイヤーが外れてしまうと、高度がかせげないのだ。
機体の離陸と同時に滑走路を併走するリトリブカーも重要な役割を果たしている。宙に舞った機体が上空で切り離したワイヤーはパラシュートを開いてゆっくり滑走路の端に落ちてくる。これを拾って、再び離陸場所に届けるのがリトリブカーの役目。運ばれたワイヤーは次の離陸機に素早く取り付けられる。
上空で訓練を終えた機体が再び滑走路の延長線上に戻ってくると、地上にいる部員が「進入!」と掛け声をかけた。機体着陸までの間に、ピストにいる日吉主任と呼ばれる部員が、着陸機体の待機場所とそこまで運ぶクルー、次に飛ばす機体を決定し指示する。着陸すると日吉主任に指示されたクルーが一斉に駆け寄って機体を素早く待機場所へ運び、その間に別の部員らが次に離陸する機体を離陸場所まで運び出す。
これらの作業を連携してすばやく行うことで、円滑な訓練につなげる。限られた滑走路で複数の大学が訓練をしているので、次の離陸への準備を効率よく済ませて、日没までの限られた時間に少しでも飛行回数を増やすことが重要だ。グライダー競技は一見パイロットの個人プレーのように見えて、立派なチームプレー競技なのである。
今月中旬には関東学生グライダー競技会、年が明けて3月になると全日本学生選手権が行われる。空の王者、慶應の華々しい「飛翔」に注目したい。
(福冨隼太郎・亀谷梨絵)

○関連記事
〔写真レポート〕2008年晩秋の航空部、訓練模様