経済新人会主催講演会『日本経済の行方~将来の担い手へ~』11月22日土曜日 13時30分~14時30分 西校舎ホール
経済新人会主催講演会『日本経済の行方~将来の担い手へ~』11月22日土曜日 13時30分~14時30分 西校舎ホール

「無私の心」で政治に臨む

今年度の経済新人会主催の三田祭講演会には、民主党代表の海江田万里氏が登壇する。それに先立って、海江田氏に自らの塾生時代について、そして現在政治家として抱いている思いなどを聞いた。

1969年の春、慶應義塾大学と早稲田大学、両方から吉報が届いた。海江田氏が選んだのは慶應義塾への入学だ。理由は、早稲田よりも、学生数の少ない慶應で個性を発揮し、自分の存在感を示したかったからだ。入学後は学生運動の波に呑まれて勉強にはあまり集中できなかったものの、ジャーナリズム研究会に入って『三田ジャーナル』という雑誌の編集、発行に携わった。また、日本全体を知りたいと思い、積極的に地方出身の塾生と友達になることを心掛けていたという。

慶應義塾の魅力について、「卒業してからの方が、より実感する」と海江田氏は語る。塾員同士の絆は固く、集まるとアットホームな雰囲気になる。至るところで結成される三田会がその象徴だ。国会三田会もあり、「橋本龍太郎氏に、そのよしみで可愛がってもらった」と懐かしそうに振り返った。

政治家を志したのは、父が毎日新聞の記者であったため、以前から政治に強く関心を持っていたからだ。自分の名前の由来が「万里の長城」であることから、日中関係には特に興味を持っていた。中国語も第三外国語として学び、専門学校へ通って習得した。

どの職業にも醍醐味と辛い部分が存在するものだが、政治家は辛い部分の方が大きいという。しかし、歴史に足跡を残すことができる数少ない職業のひとつだ。そしてこの仕事をするにあたり、最も大切なのは「無私の心」だと海江田氏は言う。私利私欲を捨てなければ、議員は務まらない。このことを改めて実感したのは、東日本大震災による製油所の火災、停電、そして原子力発電所の事故への対応をしていたときだ。つくづく、大切なのはいかに「自分」を虚しくして国民のことを考えられるかであると実感した。ただ、野心は強力な動機付けとなるため、実際に無私の心を貫くのは難しい。現在の全ての政治家にこの精神が浸透しているとも言えない。

政治というと複雑な印象を持つかも知れないが、「若者に、もっと関わってほしい」と海江田氏は訴える。選挙での投票率は60代が6割で50代が5割、そして20代が2割と言われている。政治家は票という私欲に惑わされ、投票をしてくれそうな年代にアプローチする傾向がある。それを改善し、もっと若者の声を聞こうとするべきだという。

実は海江田氏も、若手の頃は若者の意見をそれほど重視していなかった。しかし年を重ねた今は、自分が去ったあとの日本のことをより気に掛けるようになった。次の時代を支えていくのは今の若者であるため、今後もっと多くの若者が政治に関して意思表示していくことを期待している。

最後に、塾生へのメッセージを聞いた。「現在の塾生は勉強をよくすると聞いているので勉強のことは言及しない。友達をたくさん作ることを勧める。そして、卒業後に慶應義塾の真の魅力に気づくはずだが、そのためにもきちんと卒業しよう。さらに社会に出る前に基礎学力、体力を高めておくことも大切だ」。  (成田沙季)