伝達手段としての「使える」英語を

英語を「使う」能力が重要視されつつある今日、どのようにして自分の英語力を高めていけばよいのだろう。その解決の糸口を探るため、現在同時通訳者・翻訳家として活躍されている関谷英里子さんにお話を伺った。

関谷さんは慶大経済学部卒で、「日本通訳サービス」の設立者であり代表を務めている。アル・ゴア元アメリカ副大統領やダライ・ラマ14世など世界的に著名な方々の講演の通訳、国際的なイベントの司会などさまざまな場面で活躍してきた。同時通訳者としての傍ら、NHKラジオ講座「入門ビジネス英語」の講師を務め、また数々のメディアで紹介されていることから、ご存知の方も多いだろう。

サークル活動、アルバイトなど何かと忙しい大学生が英語学習を習慣づける方法として、「目標を立てること」が挙げられると関谷さん。「例えば、大学が設置している長期休暇中の短期留学プログラムなどは学習の意欲が自然と湧くため有効的です」と話す。

また、受験勉強だけでは身に付かないような、英語を「コミュニケーションツール」として捉える勉強をすべきだという。どのように自分のことを伝えるか、どうやって相手を理解していくかなどを、英語を勉強する切り口にするとより効果的な学習ができるそうだ。

そして英単語がなかなか覚えられないという悩みを抱える塾生は多いことだろう。単語のインプットとアウトプットの繰り返しはもちろん大切だが、関谷さんによれば、単語のニュアンスの違いを押さえるのが肝要だそうだ。実際に英語を使う環境にいなくても、辞書をフル活用することで可能になるという。「調べたい単語を英和辞典や和英辞典だけではなく、英英辞典も引いて全てにしっくりくるものを選択しましょう。一つの辞書だけでは不自然な表現になる恐れがありますが、複数の辞書を使うとよりこなれた表現になります」とアドバイスをくれた。さらに、類語辞典や連語辞典をあわせて引くことで言葉の感覚が身に付き、単語をイメージする力が鍛えられるそうだ。また、関谷さんが強調するのは、「スキマ時間」を有効活用すること。現在、スマートフォンのアプリケーションなどで手軽に効率よく英語を勉強できるシステムが豊富に揃っている。電車の中で、ゲームやメールの代わりに15分だけでもやってみることをおすすめする。

さらに、TOEICに関してもアドバイスを頂いた。英語力を測る基準の一つとして著名になってきているため、受験したことのある塾生も多いだろう。スコアとしては700点あたりがターニングポイントだと関谷さんは話す。「きちんと勉強をして、基礎力を身に付けていれば誰でも取れる点数です。それ以上、850点以上を目指すとなると、英語の運用力が試されます。それを高めるためには、能動的に英語を使う機会が必要です。実際に英語を話せる環境がない場合は、TOEICのスピーキング・ライティングテスト(SWテスト)を受験してみるのがよいでしょう。そうして英語を多面的に使っていくことで自然とスコアも上がっていくと思います」と教えてくれた。

最後に、関谷さんが新入生の皆さんにメッセージを贈ってくれた。「学生時代の4年間のうちに、今まで自分が知らなかったことを知る、会えなかった人に会う、行かなかったところに行く、そういったことを積極的にやってほしいと思います。そこで英語が壁になったらもったいない。英語をコミュニケーションツールとして使えるように、今一生懸命勉強してください、応援しています」。

「Rome was not built in a day.」(ローマは一日にして成らず)という言葉の通り、英語も日々の努力の積み重ねによって身に付いていく。未来の自分のために、今できることを始めよう。  (高畑里佳子)