こだわりの解説を凝縮

移りゆく時代の中でどんどん増えていく言葉。世の中の流れを理解するにはまず言葉の意味に目を向けるべきだ。今年で創刊66周年を迎える『現代用語の基礎知識』は教養を身につけたい就活生にもおすすめの本だ。

『現代用語の基礎知識』では、約150の分野にわたって毎年の最新語、時事用語をはじめ各分野の基礎用語が1冊にまとめられている。「この本の一番の特徴は、ネットとは違って執筆者が署名入りで責任を持って書いていることだ」と同本の編集長清水均さんは話す。

この本の制作は編集者が、新しいことが起きて新たな言葉が生まれていないかを見つけることから始まる。このとき専門家ではなく、編集者が一般人の感覚を持って載せる言葉を選び、それに基づく形で100人以上の執筆者が各分野の言葉の解説記事を書いている。

執筆者の責任が明確にされているからこそ、本音の解説が出来ることが同著の誇りだ。そのため意見の賛否が分かれるアベノミクスや憲法改正の是非を著者が述べるのも自由である。また、同じ語であっても異なる分野の章では違う解説の仕方がされているなど、読み手が解釈を判断することに優れているといえよう。

年に一度しか発行されないため、進行中の事柄については評価の定まっていない状態の記事を掲載する。だが途中の状態を解説することによってその事柄を考えるには十分な材料となる。

では就活の場面で大学生はこの本をどうしたら有効に活用できるのか、執筆者の先生方に聞いた。

論点が網羅されている点と、関連語句が凝縮され語句同士の相関がわかりやすい点が各執筆者の先生方が指摘する同著の特徴だ。

「就活生は自らが志望する業種や企業に関係ありそうな項目を熟読することで時事問題や面接対策に活用できる」と慶大法学部専任講師の礒﨑敦仁氏はアドバイスする。また、「関心のある言葉だけでなく何気なく目に入ってくる情報も大事。暇なときに見ているだけでも就活に役立つ」と防衛大学校長の国分良成氏は勧める。

特にこの本の強みは正確性と読み物としての面白さだろう。慶大経済学部教授の金子勝氏は「ネット情報は真偽が不明なので同著は安心して使える辞典である」。人材コンサルタントの常見陽平氏は「流行語大賞の付録だけでも面白いほどだ」とこの本を紹介している。

分量が1500ページにも及ぶこの本について「努力なくして結果なし。この本を読み込むことが就活の王道」と作家の佐藤優氏は言い切る。各方面からの見識者のファンを持つ『現代用語の基礎知識』を一度手に取ってみてはいかがだろうか。(長屋文太)