石坂敬一氏 ワーナーミュージックジャパン 代表取締役会長兼最高経営責任者 

(株)ワーナーミュージック・ジャパン代表取締役会長兼CEO、石坂敬一氏。慶應義塾大学経済学部卒業後、音楽業界を支える人材として頭角を現す。 音楽の歴史、そして音楽そのものも好きであった石坂氏。学生時代は、イギリスやアメリカの音楽に非常に影響を受けた。さらに英語を好み、国際舞台で活躍できる可能性のある音楽産業に従事。音楽業界をけん引する石坂氏に、現代の音楽ビジネスと音楽について伺った。 石坂氏は、現在の音楽市場のプロダクツには大きく分けて以下の6種のカテゴリーがあると分析する。これらは、現在強い支持を得ているという。 ①AKB48などの「アイドル&ヒットポップス」②伝統的な日本のポピュラー音楽であり、J‐POPと言われるシンガーソングライターの曲③演歌④由紀さおりのヒットが象徴的な「大人向けミュージック」⑤洋楽⑥「ストラテジック・カタログ・ミュージック」。

その上で石坂氏は、今後市場で強くなっていくカテゴリーとしてストラテジック・カタログ・ミュージックを挙げる。これは、過去にヒットした名作を集めアルバムとし、TV番組で通信販売したり、書籍に付けて販売したりするもの。 また、年齢層の高いマーケットを対象とした「大人向けミュージック」も今後さらに支持が高まるカテゴリーと捉えている。iPodなどの新しい機械への興味は持たないが、有名な曲を有名な歌手の歌唱で聴きたい人々がいる。そうした比較的高年齢層の人たちのニーズを満たすのが大人向けミュージックだ。石坂氏は「パッケージミュージックの需要を安定させるためにこの開発は非常に意味がある」と期待を寄せる。 2009年には業界売上げ規模が910億円にまで発展した「着うた」などに代表される音楽配信。こうした、近年著しい発達をみせているデジタル化は一見、パッケージミュージック(コンパクトディスク等)に影響を与えているように思われる。しかし石坂氏は、「パッケージよりデジタルが優位な主要国はアメリカだけ。日本人はアメリカを基準に考えがちだが、依然としてパッケージが健在。比率は24対76でパッケージが圧倒的なのだ」と意外な現状を伝える。

しかし同時に、デジタルの台頭が産業に与えた影響に注意を喚起する。「音楽産業ではデジタル化の動きに重きを置くIT関係者などの参入が増えている。一方でアーティストの発掘から育成までをプロデュースし、楽曲に関しても携わる仕事ができる者はやや減った。音楽が基盤である点にもっと力点をおくべきだ」と話す。

また、デジタル化が『安近短速』の特色を備える点についても語る石坂氏。「身近で安く購入でき、CMソングなどの形で短く切り売りされ、気に入ったら即ダウンロードできる。その結果ヒットソングの作り方が定型化する」と今後を案じる。

石坂氏にとって音楽とはなにかを訊ねたところ、「音楽とは『聴く哲学』。哲学というのは『How to live How to think』の2点に尽きる。音楽はこれらを与えるものだ」というお言葉をいただいた。音楽は、人間の根幹を形成する素養のひとつなのである。 日本の音楽の歴史は長く、その公的記録の古さは海外で例がない。音楽に限らず、日本が文化を保持し、また活性化してきたという歴史は国際社会でも十分に誇示できる。石坂氏は、自国に誇りを持たずに社会で活躍することはできないとし、「歴史をもっと勉強しろ」と塾生へ訴えた。身近な存在であるがゆえに、大きな重要性を持つ音楽。自らと音楽の関わり方を意識しつつ、今後どのような歴史を歩むのか注目していきたい。        (下池莉絵)


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