プロジェクトチームのメンバー

平成21年度学生起業家選手権の決勝大会で、見事優秀賞を受賞した「東京廃校再生『六本木ベジ&フルーツ』」。このプランに携わった慶大大学院システムデザイン・マネジメント研究科(以下SDM)のチームの皆さんにお話を伺った(学年は先月の取材当時のもの)。 きっかけとなったのはSDMにあるALPS(Active Learning Program Sequence)という、戦略的システムエンジニアリングなどを学ぶデザインプロジェクト。チームリーダーの八木田寛之さん(修士1)曰く「世の中を変えるようなアイディアをチームで生み出す活動」 今年度は「持続可能」というテーマのもと、国内外の様々な問題点を考察し、それらを組み合わせることでこのアイディアが生まれた。「東京廃校再生『六本木ベジ&フルーツ』」は、港区など東京都心の廃校を植物工場として再生することで、農業後継者の育成を目指すプロジェクト。 教室では野菜や果物、プールでは米の水耕栽培を行う。体育館はレストランとして改装し、育てた食材を使った料理を提供する。さらに校庭は地域交流スペースとし、廃校全体を有効活用する。 現在、港区だけでも約18校の廃校があり、東京都は47都道府県の中で廃校数が2位。これを利用して都心で農業が盛んになれば、「都会で働いて収入を得たい」という若者のニーズに応えると同時に、農業就業人口の減少にも歯止めをかけることができる。 また、水耕栽培は閉鎖された清潔な場所で行うため、農薬を使わなくて済む。「安全でおいしい食材が欲しい」という消費者の要求にも応えられるというわけだ。 醍醐奈生子さん(修士2)は「複数の問題を同時に解決できて、社会にも貢献できるアイディアだと思う」と話す。 大会ではプレゼンテーションにかなり力を入れたそうだ。「どんなに良いアイディアでも、プレゼンが良くなければ伝わらない。当日いかに印象づけるかが勝負だと思った」と八木田さん。繰り返し練習や修正を重ねるとともに、区の用地活用課や農林水産省の人物へのインタビューも行い、アイディアを売り込んだ。 さらに、肥後尚之さん(修士1)は「大会を開催する側として働いた経験もあるので、練習中は審査員の目線で意見を言った」とのこと。加瀬友也さん(修士1)は「審査員の著書を読んで研究し、審査員の目を引くプレゼンを意識した」 大会を終え、中島円さん(博士1)は「授業とは違う、より実践的な経験ができた」と振り返る。「様々な年齢・経験を持つ人と関われたのが良かった」と話すのは柄井匡さん(修士2)。野村真也さん(修士1)は優秀賞受賞を受け、「ALPSの看板のような存在になれたと思う」と誇らしげに語った。 今後の計画について、実際に起業を目指す松尾康弘さん(修士2)は「水耕栽培を研究する会社の設立から始めて、徐々に販売などまで拡大していきたい」と話した。 「六本木ベジ&フルーツ」は起業に向け、今日も走り続けている。 興味を持った方、参加したいと思った方は、代表の松尾さん(ymat1203@gmail.com)まで。          (陶川紗貴子)

編集後記…

 取材当日、「六本木ベジ&フルーツ」の皆さんは私を明るく出迎え、終始場の雰囲気を

盛り上げて下さった。おかげで多くのお話を伺うことができ、記事に書ききれないほどだ

った。

 大会に向けては、YouTubeにPR用の動画を流したり、ある農家が水耕栽培で育て

たイチゴをプレゼンテーションの際に審査員に試食してもらったりもしたそうだ。

 写真撮影に移ると、皆さんは大会のトロフィーや賞状を手に思いおもいにポーズを決め

て下さった(残念ながら1枚しか掲載できなかったが)。最後は「取材記念」ということで、

私も含めた集合写真まで撮っていただいた。

帰り際には「いつか塾新の皆さんと飲み会してみたいですね」というお言葉も頂いた。

実現すればきっと楽しいひとときになるだろう。

(陶川紗貴子)