〝スポーツ〟の語源はラテン語の〝デポルターレ〟から来ている。これは本来「息抜き」の意味合いが強い言葉だ。

そう教えてくれたのは「世界ゆるスポーツ協会」の代表として「ゆるスポ」の普及に努めている澤田智洋さんである。

澤田さんが「ゆるスポ」を考案し、協会としての活動を開始したのは2‌0‌1‌5年。オリンピック・パラリンピックのような運動が出来る人を中心としたイベントとは別に、運動が出来ない人でも気軽に参加できるスポーツイベントを作りたいと考え、そこから「ゆるスポ」という発想が生まれたという。

「元々僕は運動が苦手で、教育では能力を伸ばすことが凄く重視されてきているけれど、それに疑問をずっと持っていた」と、澤田さんは語る。

身体能力の高さが強みとして評価される一方で、そうした強みを持たない人がいる。それは極端な例で言えば障がい者や高齢者などであり、そうでなくとも運動が苦手だとか、スポーツをする機会に恵まれない人たちも多い。澤田さんの目的は、そんな人たちにみんなと一緒に楽しんでスポーツをしてもらうことだ。

例えば「いもむしラグビー」は、車椅子生活の障がい者が自室内を移動する際の「這う」行為に着目し、這いながら遊べるスポーツとして創作された「ゆるスポ」だ。そこでは健常者も障がい者も同じハンデを背負いながら一緒にスポーツを楽しむことができる。

スポーツという「息抜き」を実際にやることで心身の健康状態や人間関係に良い影響が出る。そのことを強調する澤田さんにとってスポーツとは「参加することに意義がある」ものであり、トップアスリートの育成のように高みを目指すというよりは、誰でも参加できるように裾野を広げていくことを目標に協会の活動を行っているそうだ。

「ゆるスポーツ協会」はSNSを通じてイベントへの参加者を募っており、約2年間の活動で3万人程の参加者を集めることが出来たという。その参加者というのが実に多様で、大人から子供、高齢者と若者、障がい者と健常者、女性と男性が一緒にスポーツを楽しんでいる様子が「ゆるスポ」イベントの実際の映像からうかがえる。

澤田さんを中心とする「ゆるスポーツ協会」の活動は、これまでスポーツに苦手意識を持っていたり、誰かと一緒にスポーツをやる機会がなかったりする人でも、スポーツに参加するハードルを下げてくれるだろう。

(村上龍汰)