2017年7月28日

慶應塾生新聞会 三田オフィス
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セカンドライフ研究者に訊く

 慶應がセカンドライフ(SL)上にキャンパスを出すことが決まってから数ヶ月。SLはどのような点が注目されるのか、研究者に聞いてみた。

 SL研究に携わる、デジタルハリウッド大学教授の三淵啓自氏は、取材の冒頭で次のように述べた。

「極端に言ってしまえば、SLは最早〈ゲーム〉ではない」

 SLにはこれまでの〈ゲーム〉には欠かせなかった、製作側の用意する「筋書き」が存在しない。与えられているのは「空間」のみであり、それをどのように利用するかは、全てユーザー次第というわけだ。また、ユーザー同士が空間を共にすることにより、リアルな感覚的情報の共有が可能だという点においても画期的である。

 しかし、その知名度の高さにもかかわらず、実際にSLの本質、あるいは、その可能性を理解したうえでプレイしているユーザーは今もなお少ない。国内での普及を妨げる原因の1つとして、三淵氏は「自由」の扱いに不慣れな、日本の社会基盤自体を指摘している。自由を与えられても、何をしていいのかが分からず、結局は何もしないままSLから撤退していくユーザーも多いという。

 アバター(ユーザーの化身として仮想空間内に登場するキャラクター)の設定においてもSLの効果は期待される。性別や人種を変えるなど、現実には実現不可能な「もう一人の自分」を通して行われるコミュニケーション。それは新たな自己主張の手段となり、アイデンティティや価値観の再構築へと通じるのだ。

 また、SLへの企業参入が話題になり、一般的にも「実際にお金を稼げるゲーム」という印象を抱かれているかもしれない。たしかに、仮想空間の土地を現実世界で売買するなどのビジネスは既に行われており、ほんの一部の経営者は多額の利益を得て、話題を呼んでもいる。しかし、収入を目当てにSLに参入することについては、三淵氏は「NG」と評した。たとえば、現実の商品と同じものを、仮想空間で新たなサービス(アバターの洋服など)として売り出すとする。企業は、〈アバターが仮想空間で購入する=ユーザーが現実世界で購入する〉という効果を期待しているわけだが、前述の通り、アバターとはユーザーの姿をそのまま映し出したものではない。ゆえに、アバターがその商品を購入したとしても、ユーザーへの販売促進には必ずしも繋がらないのだ。企業はSLにおいて、消費者との空間の共有やコミュニケーションを生かし、自社のブランディングに努めるべきであるという。

 世界中のクリエイティブな能力が、今後SLをどこまで発展させていくのか。その展望はまだまだ未知数である。

(谷田貝友貴)