許氏、著書とともに

大学。それは今までと全く異なる世界だ。活動範囲が広がり、時間の使い方も自分次第となる。「徹底的に迷える、そして迷うことを楽しめる時代」と語るのは慶大法学部教授で『これからを生き抜くために大学時代にすべきこと』の著者、許光俊氏だ。許氏は慶大文学部を卒業後、教授として長い間大学生と接してきた。学生から相談を受けることも多く、そこで生み出した道標をより多くの学生に届けるために本を出版したそうだ。そんな許氏に大学生活の実態について伺った。
「高校までは枠がきっちり決められていた。選択肢も限られていて、枠に自分を合わせていたけど、大学は違う。枠を自分でどのように設定するかが重要」とのこと。だからこそ、いきなり自由な環境に放り込まれ、今までと違う根源的な迷いにみんながぶつかる。「でも迷うことは自分と対決することでもある。自分を打ち負かして強くなる機会だ」と許氏は語る。大学時代はこれから社会に出るための準備期間として、特別な時間なのだ。
授業スタイルも中学や高校とは異なる。「大教室の人数や個性的な先生に最初は慣れないだろう。板書をしない先生も多い。授業の受け方のポイントは目ではなく耳で受けること」。つまり、無駄話と思っても聞いたことを書き留める。それが大事だったり、テスト前に記憶を辿る鍵になったりするそうだ。また著書では、自分で問いを立てて学ぶことも大学時代に身につけておきたい重要な習慣としている。
昔の学生と比べると「今の学生は危機感を持ってよく勉強している。でも逆に、安定を求めすぎて、冒険しなくなった。学生の失敗はたいしたことないから、どんどん経験を積むことが大事」だと語る。
また、慶大生と他大生の違いについて「慶大生は勉強ばかりではなく、余裕と面白みのある人が多い。だから趣味や勉強以外のことに全力で打ち込んでいる。また、慶應は少人数クラスが充実している。だから、教授や仲間との人間関係が濃くなる。それは愛校心にもつながっている」と述べた。
最後に「元から不幸な人はいない。不幸になる選び方を自分自身がしているだけ。賢く生きよと学生に伝えたい」。許氏の力強いメッセージはこれからを生きる私たちを奮い立たせてくれる。
(鈴木悠希子)