慶應義塾大学連携推進本部が主催する小泉信三記念講座が、先月26日三田キャンパス北館ホールで行なわれ、講師としてWHO(世界保健機関)本部事務局長補である中谷比呂樹氏が招かれた。「地球規模での健康格差の是正に向けて国際社会の出来ること―WHOの挑戦と課題―」という演題のこの講演会では、WHO組織の概要、世界の健康の現状と将来の展望、21世紀初頭から見る今後の対策について語られた。

中谷氏は、健康を「社会的にも精神的にも良好な状態であるという基本的人権」と広く定義し、WHOについて、各国が国民の健康を達成していくために作られた政府機関であると説明。これからは健康保健問題を「治療」のみならず、「予防」の観点から捉えた上で、日本の高い医療技術による発展途上国への公衆衛生面の支援を外交政策の一環として打ち立てていく必要性を述べた。

また、「3・11は日本に大きな試練を与えたが、この経験から学び、世界へ主導的に発信していかなければならないだろう」と、東日本大震災にも言及し、困難な状況下あってもなお、各国への支援を継続することの重要性を説いた。

中谷氏は1977年慶大医学部卒業。以後、厚生労働省大臣官房参事官などを経て現在に至る。