認知機能障害治療が前進 薬剤による発症を予防

慶大医学部の仲嶋一範教授らは、統合失調症の主な症状である認知機能障害のうち薬剤誘発性のものの予防手段を発見したと今月5日に発表した。今後さらなる解析を行えば、現在有効な治療法が限られている認知機能障害の病態解明や治療法の開発につながる可能性がある。

統合失調症は思春期から40代までで多く発症する精神疾患で、日本での有病率は約1%と言われている。幻覚や妄想、激しい興奮などの陽性症状、自閉や無気力、感情薄弱化などの陰性症状に加えて記憶力、注意力、判断力などの知的能力の低下などの認知機能障害があらわれる。

フェンサイクリジン(PCP)と呼ばれる麻酔作用をもつ有機化合物によって、抑制性神経細胞の機能が低下することで、興奮性神経細胞とのバランスが乱れることが統合失調症における認知機能障害の要因のひとつとであるとされている。

本研究では、抑制性神経細胞のもととなる細胞群である内側基底核原基(MGE)を大脳の前頭前皮質に移植したところ、MGEから作られた抑制性神経細胞が脳内の神経回路として定着していることが確認された。抑制性神経細胞が増加したことで、PCPによって引き起こされるはずの認識機能低下は起こりにくくなったという。

今後、前頭前皮質での抑制性神経細胞の増加を促進させる薬剤や手法、また新たな治療法の確立が期待される。