被災地では懸命な支援が続いている (写真はIFRC提供)
被災地では懸命な支援が続いている (写真はIFRC提供)
 東日本大震災から約2カ月。余震は今でも続いているが、復興へ一歩踏み出す時期に来た。塾生に今なにができるのか、本当にすべきことは何なのか。日本赤十字社企画広報室の松本彩香さん、血液事業本部の奥山藍子さんにお話を伺った。
―現在の現地の状況はどうでしょうか。
 奥山 4月上旬に岩手へ行きましたが、現地は落ち着いていました。一段落して被災者の方は、家族を亡くした、家が流されたなど、自分の置かれた状況を受け入れなければならない時期にさしかかり、ストレスが増えています。物資はありますし、食べ物は足りています。
―現地での支援に関して、今起きている問題は何でしょうか。
 奥山 写真を撮るためだけに来る人が居たりすることで道路が渋滞しており、必要な支援の妨げになっています。
 松本 ボランティアに来る方も、スケジュールや仕事内容が想像よりきつかったようで、途中で投げ出してしまう例がありました。事前に内容をよく調べた上で、自分の体調なども考えながら参加すると良いと思います。
―私たちのような学生が現地でできることはあるのでしょうか。
 奥山 現地での瓦礫の撤去などは、若い人手がとても役に立ちます。また、本格的な精神面のケアは難しいですが、仮設住宅などを訪れて「元気ですか?」などと声掛けをするだけで被災者の方の心の支えになります。ただ現地は落ち着いてきたとはいえ、まだ十分にボランティアの受け入れ体制が整っている訳ではないので、事前にボランティアを受け付けている組織に問い合わせてみると良いでしょう。一時的にではなく、長期的かつ定期的に被災者の方と関わり続けようとすることが重要ですね。
 松本 大学生の時にこの震災が起きたということは、会社を休めない社会人とは異なり、現地に行って実状を見たり、被災者のより近くで支援が出来る良い機会なのではないでしょうか。
―現地入りするには、特別な知識や準備が必要とされるのではないでしょうか。
 奥山 被災地では、全国社会福祉協議会が中心となってボランティアを募集しています。ホームページに事前にしておくべきことや持ち物が指示されているので、参考になると思います。電話して聞いても良いでしょう。
―現地入りのほかに、支援の方法はありますか。
 松本 代表的なものは義援金です。日赤では、頂いた義援金は手数料を取ることなくその100%を、災害の度に立ち上がる義援金配分委員会に送り、確実に被害のあった県に届くようにしています。その他には各都道府県内で行っているボランティアに参加することや、献血をすることが挙げられます。また、メディアでの報道が減っても関心を持ち続けること、買い占めなど利己心を持たずに、「もし自分の身に起きたら」と想像することが大切です。
―そういった支援の際に注意することは何でしょうか。
 松本 企業や路上などで「日本赤十字社に送ります」と謳っている募金は、全て日赤に社名使用申請を提出して頂いています。「本当かな?」と思ったときは、その申請をしているかを聞くか、直接日赤に問い合わせをするなどしてみてください。
 奥山 献血は震災後たくさんの方に御協力いただき、今では十分な量があります。けれども血液には使用期限があるので、一時に偏ることなく継続的に献血をしていただくことが必要です。
―大学生はインターネットなど、たくさんの情報に惑わされがちですが、正しい情報を得ていくためにはどうすれば良いでしょうか。
 松本 支援団体も混乱しているので、やはり現地入りをして自分の目で確かめるのが一番。また、テレビだけ見る、などというのではなく、テレビと複数の新聞など、多様なメディアで情報を比較するのも良いでしょう。周りに流されて被災地への差別をすることは本当に良くないことです。
 奥山 阪神・淡路大震災でもたくさんの間違った情報が流されました。その復興期が実際どのようになっていったのかを調べ、今回の震災に活かしていくことも良いと思います。
―ありがとうございました。
  *   *   *
 日本赤十字社では一般ボランティアの受付開始は未定だが、訓練を受けた青年学生赤十字奉仕団が現地でボランティアを行っている。これを機に新たに講習を受け始めることも可能だ。個人でのボランティアは全国社会福祉協議会ボランティアセンターへ。
 学生である私たちも、適切な支援を長期的にすることで確実に復興の支えとなることができるだろう。ためらわずに、一歩を踏み出したい。 
      (池田尚美)