「五感から感じられるものを大切に」
「五感から感じられるものを大切に」

「どんな人の心をも豊かにするものが『アート』であり、それは人間が人間である為に必要なものだと思いますね」
慶大アート・センターのキュレーター、渡部葉子教授は、こう語る。
「アート」というと、どこかお堅いもの、教養がある人の楽しみというイメージが多かれ少なかれある。だが、アートに対するある種の既成概念を覆し、枠にとらわれない「アート」の面白みをアート・センターは教えてくれる。
アート・センターでは、義塾にある貴重なアート作品のケアと活用を担うと共に、アーカイヴとして多くの資料を所有している。
多くの美術館や博物館が作品や資料を記録、保存するのに対し、アート・センターのアーカイヴでは、資料を保存して、研究や教育に活用するのはもちろん、そのエッセンスを元に、新しい資料を生み出す可能性を引き出すことにも取り組んでいる。
「作品や資料を残すものとして扱うことも大切な部分だけれど、元々ある作品や資料を新しい形、『今日性』をもって提示できればればと思っています」
各々の作品、資料に込められたメッセージに対し、現在生きる私達はどう捉え、どう感じるか。そして、それをどう表現するか。
「作品や資料は出来上がったものではなくて、常に新しい可能性を秘めたもの。継続することに意味があります」
過去の作品や資料を資料として残すだけでなく、現在の人々の視点を組み入れ、そこから新たな作品、資料を生み出す。
それは、過去、現在、未来とひとつの作品や資料をもとに、幾つもの可能性を生み出すことへと繋がる。
アート・センターが主催する講演会、公開講座は、アートにおける専門家、プロを呼ぶものの、参加する人が自分のものとしてアートに何かを感じられるよう、内容は、専門性を重視しない。
作品や資料に触れることで五感から感じ取れるもの、作品を制作した人と話をすることで、作り手と受け手がフィードバック出来るもの。「アート」に関わるあらゆるものを見たり、聞いたり、触れることで創出する「今」の人の視点、『今日性』に主眼を置く。
「日常生活とかけ離れたものでなく、今生きる人々に関わっていられるもの。そういった視点で『アート』を捉え、共鳴したり、驚いたり、生き生きとした毎日に繋がるものとして『アート』があればと思っています」
自分の中にある「アート」の既成概念を取り払い、肩肘張らずに踏み込むことで見えるものこそが「アート」の本質なのかもしれない。
第2回公開講座「歌舞伎座という現場」2010年10月23日13時30分~三田キャンパス、西校舎517教室にて開催。                (曽塚円)