昨今、就職活動が早期化している。同時に、就活と学業の両立に悩む学生も増えつつある。今回は、商学部の清水聰教授、メディア・コミュニケーション研究所の李津娥教授に就活早期化の実態について話を聞いた。

 

清水聰教授

就活が早期化している現状を、清水教授は「非常に由々しき問題」と懸念する。多くの学部生は3年からゼミに入って初めて、専門的な内容を学ぶ。しかし、インターンや就活を早めに始めるほど、学業には取り組めなくなる。それでは、企業は何をもって採用を決めているというのか。

「大学で学んだことを生かさないで採用活動が行われていることに問題があるのではないでしょうか」。他にも、学生が就活を理由にゼミを頻繁に欠席する事や、周りが内定を取り始めたことに焦りを感じ、「質より量」な就活に走る事も悩ましいという。

また、就活早期化の原因には、日本の景気が関係していると指摘する。現在、日本企業の景気が良くなりつつある一方、18歳人口は減少している。さらに、昨今は転職する人も多い傾向にある為、企業は常に働き手を補充しなければならない。そのような社会の流れの中で企業は、早めに良い人材を確保していくのだ。

最後に、就活と学業の両立に励む学生へ一言。「何のために慶應に入ったのかを考えてほしい。慶應に入ったことはゴールではありません。学業面で仲間と高めあえてこその大学であり、就職予備校ではありませんから」。実際に教授の経験からしても、真面目に学業に励んでいた人は順調に就活を進めていた傾向があるそうだ。

今、就活において、ゼミのような少人数で取り組んだ活動が評価されている。そういった活動に対して、要領よくかわして通るのではなく、経験を蓄積していくことこそが大切なのだという。「人と違う頑張ったものを作って、切磋琢磨できる仲間と高めあってほしいし、それが最終的には良い就職にも繋がると思う」

 

李津娥教授

李教授は就活の早期化に伴い、「就活のあり方に関する社会的議論が必要だ」と指摘する。新型コロナウイルスの影響により、就活が早期化しただけでなく、採用に対する企業の考え方や採用方法などにも変化が現れた。情報力やネットワーク力、コミュニケーション力などが求められるようになり、就活に前向きで、ゼミ内で同じ業界を目指す仲間や先輩、OBOGとの関係性を重視する学生が増えたという。

「今回のような特集は重要な問題提起になるでしょう」と李教授は言う。就活と学業の両立に悩む学生に対し、自分のペースで就活に取り組んでほしいとし、「就活は長期戦になる場合も多いので、ストレスに上手く対処し、レジリエンス力(回復力)を高めることも必要です。ポジティブ心理学、ポジティブメディア心理学という研究分野がありますが、情報収集だけでなく、こうしたスキルを高めるためにもメディアを上手に活用してください」と自身の専門である社会心理学・メディア心理学の知見も交えながら語った。

「大学での就活も学業も自分が成長できる大切な機会です。大学でしかできないこともたくさんあると思います。仲間とのつながりを大切にしながら、就活と学業を上手に両立して、充実した大学生活を送ってください」

 

佐藤心蘭関口絢音