4月は、入学式や新歓など、新入生にとって目まぐるしい月となるだろう。日々新しい人と出会う中で友達作りに不安を感じる者もいるかもしれない。今回は、慶應義塾大学教職課程センター准教授で教育臨床心理学が専門の金子恵美子先生に「友だち作り」の極意を聞いた。

青年期の友人関係

大学生を含む青年期(12〜26歳ごろ)において、友人関係は特に重要であると金子先生は指摘する。青年期になると親から自立しようとする傾向が強くなるが、実際は社会的にも精神的にもまだ難しい。そこで、不安や悩みを共有し支え合いながら互いに自立を目指す友人との関係が深まるのだ。

青年期の友人は、自己形成に影響を与える。関わりの中で自己を理解していくことは、「アイデンティティの確立」にもつながる。しかし、その途上で自己が不確かだと友人に合わせすぎてしまい、さらに自己が不確かになってしまう。その結果、不安や葛藤に苛まれることもあるのだ。

一方、大学生になると、サークルやアルバイト、授業などコミュニティが大幅に広がってゆく。友人との関わり方も人それぞれであるため、高校までに比べ、過ごしやすいと感じる人もいるだろう。

「良い聞き手」になる

金子先生によれば、「良い聞き手」になることも友達作りのコツだという。この方法なら、自分から話すことが苦手な人や、つい緊張してしまう人でも実践できるだろう。「良い聞き手」の条件は、①相手が話しやすい雰囲気を作り②一生懸命聞き③受容する(頷き、相槌、質問をする、表情を相手に合わせる)ことだ。ただし、聞き手に徹するだけでも不十分だ。相手と心の距離を縮めるためには、自己開示も重要となる。話したり関わったりしながら徐々に相手を知り、同時に自分のことも相手に伝えることで、関係性が作られていく。

「他者理解」と「自己理解」

友人関係の中で、相手に合わせ過ぎたり、一緒にいることを拒否されることに不安を感じたりすることもあるだろう。だが、金子先生は「友人とかかわる時に相手を理解しようとすること、すなわち”他者理解”のために努力することが重要」という。相手のことを理解しながら、自分と相手は異なる人間であることも受け入れることで、自分の考え方を広げ、相手を尊重することもできる。

他者理解と同様に重要なのが、”自己理解”だ。自分を客観的に見つめ直し、自分を知ることで、自分の気持ちを落ち着かせ、人との心地よい関わり方もわかっていく。自分について知ることで、安心して人と関われるようになるという好循環が生まれるのだ。

一人の時間も大切に

友達がいないことに悩む人もいる。しかし、金子先生は「一人にも意味はある。自分について考え知るためには一人でいる時間も大切」という。また、友人関係に疲れてしまった時は一旦距離をおいて冷静になり、客観的に考えてみる時間も必要だ。友人に自分の気持ちを受け止めてほしいという理想にこだわり過ぎず、関わること自体を楽しむことも大切である。

最後に、金子先生に新入生へのメッセージをもらった。「自分について知る4年間にしてほしいなと思います。色々な人と出会って関係を築きつつ、自分について考える機会にもしてほしい」とメッセージを送った。

いよいよ始まるキャンパスライフ。不安と緊張を感じているのは皆同じだ。さあ、友達作りの極意を胸に、勇気を出して隣の席のあの子に話しかけてみよう。

金子恵美子先生(写真=提供)

(堀内未希)