BranCo!はいつ、どのように始まりましたか。また、博報堂としてBranCo!の共催に着手するに至った経緯や理由はありますか。

BranCo!は2012年度に開始しました。もともとは東京大学教養学部と博報堂でbrand design studioという授業を共同で開講していたのですが(現在も開講中)、他大学の方も参加したいとの声が多くあり、拡張版としてコンテストの形を取ることになりました。

今でこそ特にマーケティング系の学部などでブランディングの授業が増えてきていますが、当時はあまり授業も多くなかったように思います。「世の中を捉え、質的な変化を起こすような体験を生み出す」というブランドデザインの考え方は、ビジネスに限らず活用できるものと思い、我々の持っている知見や手法を皆さんに知っていただこうと思ったのがきっかけです。

BranCo!の開催目的は何でしょうか。

1つ前の返答と重複しますが、なかなかブランディングなどに触れる機会のない大学生の方々に、「ブランドとは」「らしさを設計するとは」といった視点でチャレンジをしていただくことが目的です。また、聞いて学ぶだけではなく、実践して「身につける」ことができることもBranCo!という形式で開催している目的でもあります。

BranCo!の正式名称が「ブランドデザイン」コンテストであることからも分かるように、いわゆる一般的なビジネスコンテストとは違うわけですね。BranCo!独自の強みは何でしょうか。

1つはテーマが抽象的であることです。個別の企業の課題や売り上げといったものではなく、人生を生きていく上で普遍的に関わってくる概念をテーマとして選定しています。これによって、誰もが自分の人生との関わりを見つけたり、自分の人生を振り返ったりすることで、参加できるようなコンテストになっていると思います。また、抽象的かつ普遍的なテーマについてじっくり考えることで、新しいものの見方や概念を提示するような試みになっているのではないかと思います。

2つ目の特徴は、継続的な学びのコミュニティがあることです。参加者の皆さんには、コンテストと同時並行でBranCo! Academyというコミュニティに入っていただいています。これまであまりブランドデザインの経験がない方でも自らがスキルアップできるように、定期的に社員がレクチャーやミニワークをファシリテートするような機会を設けています。さらに、1次審査を突破したチーム限定にはなりますが、2次審査・決勝までの期間に博報堂社員のメンターが1チームに1人ついてアドバイスをしていきます。

3つ目の特徴は、いろいろなタイプの学生さんが参加されるということです。例年文系、理系問わず多くの学生さんに参加していただいていますし、数年前から高専の方々にも参加できるように門戸を開きました。普段あまり触れ合うことのない、違う専門性を持つ学生さんとの交流の機会にもなります。

「大学生のための」と謳っていますが、大学生に限定している意図はありますか。

もともとは経緯のところでお話しした通り、大学の授業の拡張版として始まったため、「大学生のための」と謳っています。当時は4年制大学・大学院の方に限定していたのですが、最近はもっと広い方々に参加いただいても良いのではないかと考え、高専や短大の方々にも参加できるように参加基準を変更しました。

BranCo!には毎年テーマが決められています。テーマの選定基準や、テーマにかける運営側の想いはありますか。

テーマに込めた想いは先程の通りですが、「普遍性」と「時代性」その両方を基準として選定しています。過去には「自由」「普通」「秘密」などをテーマとして選びましたが、これらは概念として深く掘るような意味があり、かつ、時代の変遷によってもその意味が変わっていくようなものであると考えています。また、「嘘」や「暇」のように、悪いものと捉えられがちなものをテーマとすることもあります。両義性を持ったものを見直してみる、常識を疑ってみることにも面白みがあるのではないかと思います。

BranCo!の優勝チームに例年共通している点は何だと思いますか。

BranCo!では、インプット-コンセプト-アウトプットの3つのステップを重視しています。様々な事実をインプットとして集めてきて、その中から本質をコンセプトとして抽出する、そしてそのコンセプトを体現するような、“みんなが乗り合いたい”と思えるようなアウトプットを考える。優秀チームに共通する特徴として、このインプット-コンセプト-アウトプットの行き来があると思います。1回目のインプットだけではなくて、さらにもっと深掘るためのインプットを再度やってみたり、アウトプットを考えて、それを試すためにプロトタイプを作り調査をする、などなど…。行ったり来たりを繰り返すことで、深み・面白み・現実感を兼ね備えたアイデアを提示している優秀チームが多いように思います。

次回のBranCo!のテーマは決まっているのでしょうか。

次回BranCo!2024のテーマは「遊び」です。遊びと言う概念も幅広く捉えることが可能です。ゲームなどの「遊戯」も遊びですし、「時間の遊び」のような余白といった意味合いを持つかもしれません。古くはホイジンガが人間をホモ・ルーデンス、つまり、「遊ぶ人」と定義して、遊びこそが人間活動の本質であると語っています。またロジェ・カイヨワは「意志←→脱意志」「規則←→脱規則」という2軸で遊びを類型化しました。

これまでも多様な研究がなされてきたテーマではありますが、そうした情報に触れるだけでなく、現代に生きる皆さん自身の具体的な体験や実感、工夫を凝らした独自のアプローチを通じて、「遊び」とはなんなのかを考え、そこに横たわる本質的な課題や眠っている可能性を探索していただきたいと思います。そして、このコンテストの醍醐味は具体的なブランド(商品やサービス)の新しいアイデアまでを考えることです。「遊び」という壮大なテーマに唯一の正解があるわけではありませんが、皆さん自身が、今こそ、この世界につくりだすべきだと信じられる、想いのこもった「遊びに関するブランド」のアイデアをお待ちしています。

その他博報堂が共催主催しているイベント、学生関連のプロジェクトで注力しているものはありますか。

BranCo!を運営している「博報堂ブランド・イノベーションデザイン」という我々の組織では、若者研究所という活動も行っています。若者研究所は、「若者と、未来の暮らしを考える」をテーマにしており、若者のみなさんと一緒に「私たちが望む未来はどんなものなのか」「変えたいこと、変えたくないことは何なのか」を考え、そして発見した兆しをもとに、様々な企業と共に、未来を作り出すためのヒントや、新しいアイデアの種を探っています。こちらも一緒に活動してくださる学生研究員の方を随時募集していますので、興味ある方はお問い合わせください。
https://h-bid.jp/wakamonoken/

その他にございましたらお願いいたします。

2023年度のBranCo!のテーマは「遊び」です。これまでと同様、考えがいのある深いテーマだと自負しています。Twitterでは、今後のコンテストの詳細や情報、ためになるコンテンツを発信していきますので、ぜひフォローをお願いいたします。
https://twitter.com/BranCo_info

(野田陸翔)

BranCo!優勝者の決勝前インタビューはこちらから↓
https://www.jukushin.com/archives/55093