全国高等学校野球選手権神奈川大会には強豪校が集い、甲子園出場を懸けて毎年熱戦が繰り広げられる。その中でも毎年注目を集め、今年度ベスト8まで勝ち進んだ慶應義塾高等学校野球部監督・森林貴彦さんに、今年度のことから来年度以降のことまで詳しく話を聞いた。

監督の森林貴彦氏。2015年秋より就任。Enjoy Baseballを部員とともに追求し、頂点を狙う。(写真=提供)

――今年度の全国高等学校野球選手権神奈川大会は準々決勝進出という結果になりましたが、部全体でどのような感想を抱いていますか。

勝ち進んで甲子園の舞台でやりたかったという思いがあり、もちろん満足できる結果ではないです。しかし、今年の3年生は高校生活が全てコロナ禍でした。不完全な状態ではあったものの、最後の大会を多くの方の前でプレーできたことは良かったと思っています。

 

――神奈川県は激戦区ですよね。

そうですね、ライバル校も強豪校も多いので勝ち上がるのが大変ですが、その分やりがいがあると思っています。

 

――日々の練習で気をつけていたことは何ですか。

自分の役割は、まだまだ未熟である高校生が、個人として、チームとして成長できるよう手助けをすることです。

 

――監督から見て最も印象深かった試合は何でしょうか。

4回戦の桐蔭学園との試合です。桐蔭学園とは、この2年間で4回目の対戦で、何とかやり返したいという気持ちが僕も選手も強かったです。ある程度互角の試合になるとは思っていました。その中でも自滅せず自分達がやることはしっかりやり、普段の選手の機能だけではなく実力プラスアルファの部分も十分に出た良い試合ができました。大事な試合で力を発揮できたという意味ではチームとして自信になる試合でした。公式戦でできたらいいなと思っていた試合が実現できてよかったです。

 

――今年は甲子園でも吹奏楽部の応援が盛り上がりましたが、吹部の演奏などの応援はどのような効果があるのでしょうか。

ここ2年間は吹奏楽なしで、ひどい時はお客さんも保護者も球場で応援することができませんでした。やっぱり何か足りないしつまらないなと思います。観客がいて吹奏楽の応援があって、そういう舞台でできることが幸せだなと痛感します。

応援は選手にとても勇気を与えると思います。特に今年は2年ぶりの吹奏楽での応援だったので、例年以上に緊張感とか応援の迫力みたいなものを高校生は感じていたのかなと思います。

 

――今年度はどのようなチームでしたか。

例年よりも、自分達はこうしたいという意志が強いチームでした。長く経験している人間の目からすると不安や未熟と思うこともあり、伸び代があるチームだったと感じます。

 

――夏の大会を終えて新チーム始動ということですが、次のチームは現段階でどのような感じですか。また、次のチームをどのように導いていきたいですか。

次のチームの方が、チームのためにプレーするという献身的な意識が強いメンバーが多いので、そこの良さを引き出していきたいと思っています。

 

――来年度以降の目標をお聞かせください。

今までに引き続き慶應日本一です。日本一というのは2つの意味があって、1つは甲子園優勝という野球の結果としての日本一です。もう1つは、言動や態度においても日本一にふさわしいと思われるチームになるという意味の日本一です。2つの意味の日本一を追求していきたいです。

 

――慶應義塾高校野球部が一番大切にしていることは何でしょうか。

自分で考えるということです。野球は誰かに頼まれてやっているわけじゃなくて好きだからやっている。だから監督に言われたことだけをこなしていてもつまらない。部員には、答えを教えてもらうのではなくて自分で探してほしい。もちろん手助けしたり修正したり、というのはこちらがやりますが、部員それぞれが自分で試行錯誤する、自分で考えることを大切にしています。

日吉キャンパス内にある日吉台野球場にて、日々練習に取り組む。(写真=提供)

――悔いが残らない試合は存在すると思いますか。

存在しないと思います。勝ったとしても100%できたなんてことはなくて、もっと出来たという思いは必ずあるし、それが向上心につながると思います。いくらやっても悔いが残るような試合で終わってしまう。その悔いを少しでも減らすために練習する。

悔いのないゲームをしたいと思うけどそれは理想であって、悔いのないゲームはありません。スポーツに限ったことではありませんが、どれだけやっても完璧にはならない点に奥深さがあるのではないかと思います。

 

今年度の結果に対する感想や来年度以降の抱負、さらに自分で考える、という慶應義塾高等学校野球部の核となる部分についても詳しく聞くことができた。野球の結果としての日本一だけではなく、日本一にふさわしいチームを目指す慶應義塾高等学校野球部の活躍にこれからも注目だ。

 (齋藤和奏子)