「奇跡」の自然 途絶えさせない 奄美・沖縄 悲願の世界遺産に

7月26日に世界自然遺産に登録された、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」。登録地域には、多種多様な希少生物や固有種、約100種にも及ぶ絶滅危惧種が生息している。
多くの固有種が残る奄美大島、山脈やサンゴ礁などの雄大な自然を持つ徳之島、「奇跡の森」と呼ばれる沖縄島北部、豊かな河川やマングローブ林を有する西表島。4島がそれぞれ異なる魅力を持ち、その自然との近さが観光客を魅了する。

登録延期を乗り越えて

登録までの道のりは、一筋縄ではいかなかった。推薦地の非連続性や外来種問題、観光管理の必要性を理由に、平成30年には登録延期の勧告を受けたことも。今回晴れて世界遺産に登録された裏には、関連団体の並々ならぬ努力があった。

登録地域のPRやルート作りを担う鹿児島県観光連盟の日高公子氏は、「国や県、地元市町村等と連携し改善に尽力した。登録決定には、これらの取り組みへの評価もあった」と振り返る。外来種対策条例を定め、希少種保護キャンペーンやパンフレットで情報を発信。非連続性が指摘されていた推薦区域は、当初の24箇所から5箇所にまで繋げることに成功した。

同じく登録に向け活動してきた国頭村役場世界自然遺産推進室の玉城祐太郎氏は、地域住民の理解を得る活動にも注力したと語る。自然と地域の保護のための規制対象を明確化するとともに、説明会やワークショップを開催。こうした活動を通じ、登録への前進を実感したという。

雄大な自然を守り、伝える

沖縄島北部と西表島は、山や森林のほか、魚類における日本一の多様性を誇る浦内川が見どころだ。「海のイメージが強い沖縄だが、登録地域に広がる森や川を見ると、そのイメージが変わる」。そう話すのは、沖縄観光コンベンションビューローの賀数恵里奈氏。世界自然遺産登録に向け、プロモーション活動を行ってきた。同法人の照屋大地氏は、今後も「知ってもらう」活動を積極的に続けていきたいと意気込む。

「奄美・沖縄」自然遺産プロモーションイベントの様子

ヤンバルクイナ、ノグチゲラなど希少生物も多く生息するこの地域。自然との距離の近さゆえに生じる課題もある。特に深刻なのが〝ロードキル問題〟。希少動物が車に轢かれる事故が後を絶たないのだという。車で現地を観光する際には、スピードを出しすぎないようにしたい。また、該当地域の動植物を採ったり持ち帰ったりしないことも大切だ。

ヤンバルクイナ

「魅力は自然そのもの。世界に誇る自然遺産として未来へ引き継いでいくために、観光と自然保護の両立を目指す」と、賀数氏は今後の展望を語る。修学旅行先が沖縄という学校も多く、登録地域での体験は、大切な自然を後世に残すためにできることを考える機会になるだろうと期待を寄せている。

貴重な遺産を後世へ引き継いでいくためには、現地の人々の取り組みだけでなく、観光客一人一人の理解も必要不可欠だ。現地を訪れる日まで、豊かな自然という人類の共通財産を守るための知識をつけ、思いをはせてみてはどうだろうか。

(三尾真子)