米海兵隊との実動訓練「アイアンフィスト18」にて、AAV上陸後に展開する部隊(提供:陸上自衛隊)

限られた予算で防衛力を整備し、日本を守る

8月31日、2022年度の概算要求で過去最多額を更新した日本の防衛費について牧野本部長は「自国を守る体制を強化することが重要である」と認識している。

隣国である韓国の軍事費は、2005年から比較して2.5倍に増加した。公表されている額だけで、中国の軍事費も30年で42倍に増加している。

「過去最多とはいえ、周辺国の状況と日本を取り巻く安全保障環境に鑑みるにあたり、特に作戦運用の実効性向上ができるのかとの視点での充実が必要かつ限られた予算の中で、何ができるかを考えていく必要があります」と牧野本部長は語る。

対照的に、中国の軍事費は、公表されている額だけで22兆円と日本の防衛費の4倍以上に及ぶ。環太平洋諸国との連携について、牧野本部長は次のように語る。

「軍事費を拡大させ続けている中国と、同じ予算を組んで防衛力を整備していくのはもはや不可能。こうした非対称な環境で、平素から我々がどのように防衛力を整備していくべきか、研究を進めています。それだけでなく、やはり自分の国は自分で守るという意識と覚悟、そして防衛努力のもと、日米同盟やクアッド、インド太平洋地域の国々との連携を強化していく。こうした隙を見せない体制を整えることで、日本を守っていくことが重要です」

 

「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえる」―時に自らの生命をかけてでも任務を遂行する自衛隊。私たちと同じ、“普通の人間”で構成される自衛隊をどのように扱うか。そして、日本をどのように守っていくか。決して他人事ではない。むしろ、法治国家である日本において、それは文民である私たちの「自分の国は自分で守るという意識と努力」にかかっているのではないだろうか。

 

神谷桃華・堀内未希