法律から考える防災 岡本正先生インタビュー

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9月1日は防災の日だ。今年は東日本大震災から10年の節目でもあった。弁護士であり、慶大で災害復興法学講師を務める岡本正先生に話を聞いた。

災害と法律

岡本先生は2001年に慶大法学部法律学科卒業後、弁護士として働く傍ら内閣府に出向していた。その中で日本には、災害時に被災者を助ける法律や社会の仕組みがたくさんあることに気が付いたという。一方で役に立つ法律を知らないまま被災してしまう人を減らしたいと考え「災害復興法学」を立ち上げた。
防災訓練では机の下にもぐったり、津波や火災から避難したりするといった身を守る訓練がされている。そして災害が起こると、衣食住が大変になるだけではなく、どのように生活を立て直していくかという課題にも直面する。その生活再建に法律が役に立つのだ。

「皆さんを助けてくれる仕組みがある」と伝えることが岡本先生の目指す、新しい防災教育の入り口だ。事前に被災者支援の知識を持っていることは、暮らしを立て直すための不安を緩和する。防災教育段階から、知識の備えとして災害時に役立つ法律や支援を知っておきたい。
「災害復興法学を通じて災害と法律の密接な関係を知って、平常時から防災を自分ごとにしてもらいたい」と岡本先生は語る。

あなたを助ける防災知識

テレビやネットでの被災地の映像から、被害の状況や目に付く防災の情報を得ることができる。岡本先生がまず伝えているのは、被災地ではローンが払えなくなったといった悲痛な声があることだ。ニュースでは出てこない生々しいお金の悩みを知ると「自分ももしかしたらなるかもしれない」という危機感が生まれる。津波の映像と同じくらい身近に、被災後の姿を分かりやすく感じてもらえたら良いと話す。

その上で、知っておきたい知恵を四つ紹介する。
一つ目は、被災したら「罹災証明書」と言う言葉を思い出して欲しい。罹災証明書とは住宅などの被害の程度を世帯単位で証明してくれるもので自治体が発行する。

二つ目は「被災者生活再建支援金」の存在だ。大きな災害で住宅倒壊の程度に応じて法律上最大で300万円現金がもらえる制度である。罹災証明書と被災者生活再建支援金は、勝手に郵送され振り込まれるものではない。自分で窓口に申請する必要があるため、情報を取りこぼさないように今から知っておいて欲しい。

次に「災害弔慰金」は自然災害で亡くなった方の家族に対して最大500万円支給される。
そして「自然災害債務整理ガイドライン」だ。東日本大震災をきっかけに作られた、破産をせずとも支援を受けられる、新しい債務整理の仕組みである。自然災害債務整理ガイドラインはその後の熊本地震や西日本豪雨でも使われた。復興段階で課題を克服して、次の災害にはより良い支援を受けられるようになっている。これらの法律や制度は、被災したら手続きが始まるという知識が希望になるのではないか、と岡本先生は考える。全く知らずに悩んでいる人と、情報を入手しようとする人とでは災害直後の安心感が変わってくる。

「災害時にはきちんと皆さんを助けてくれる法律や制度・情報が飛び交っています。キャッチするためのきっかけの情報を知っておいて欲しい」。これが岡本先生の目指す防災だ。

防災を真に自分ごとにする

法律は罰やルールといった厳格なイメージがあるかもしれない。しかし、被災者を取り巻く法律は温かく助けてくれるものだ。普段の生活の延長に災害の悩みが潜在的にある。現在の自分の生活をどのように維持できるかと考えることが防災につながり、被災してしまったとしても日常を取り戻すために法律が役に立つ。そして我々が生活再建の知識をシェアするだけで何人もの人を救えるのだ。

(高橋明日香)