企画

教育現場の性被害防止 総合政策学部小笠原和美教授インタビュー

『おしえて!くもくん』誕生の経緯

小笠原教授は今年、性被害防止を啓発する絵本、『おしえて!くもくん――プライベートゾーンってなあに?』を監修・出版した。3歳から8歳頃までが対象だ。

小笠原教授とmasumiさんが、今年2月に出版した『おしえて!くもくん』(写真=提供)

 

教授は総合政策学部の1期生だ。先輩欲しさに入った日吉のテニスサークルで、この絵本を企画したmasumiさんと同期になった。

2008年に海外の性暴力被害対策の先進的な取り組みと日本の遅れを知り、被害者支援の充実を中心に活動していた。幼少期から家庭内で性被害に遭っていた人々と出会い、衝撃を受けたという。彼らは思春期になってから、性被害を思い悩み、リストカットや性関係の逸脱などを繰り返すことも多い。しかし、その被害者の多くは、当時、幼過ぎて性被害に遭っていると認識できていない人が多かった。だからこそ、幼児期からの啓発が必要だと感じたという。

「私の講演を聞きに来てくれていたmasumiさんが、社会全体に広げるため、より低年齢の子供にも伝えやすく、保護者にも受け入れられやすい『絵本』の制作を提案し、ストーリーも発案してくれた。この絵本のポイントの一つは、被害者・加害者・傍観者という三つの視点を描いており、誰かに共感できる。masumiさんは労を惜しまずウェブサイト構築まで取り組んでくれた。慶應での出会いに感謝したい」と語る。

 

性被害防止の「最後の砦」としての学校教育

教授は、今回の文科省の動きをきっかけに、学習指導要領の見直しが進むことを期待する。「今の性教育では、子供たちは正しい知識が得られず、ネットを通じて誤った性的言動に慣らされている。まずは子供たちが性暴力の加害者・被害者になることを防ぐための知識を、この動きの中で広めていく必要がある」と訴える。さらに「思春期になる前に、性について家庭内で話してほしい」とも話す。最近は「おうち性教育はじめます」(KADOKAWA)など、保護者向けに漫画でわかりやすく性教育を伝えるものも出てきている。被害に遭った子は、自尊心を傷付けられ、被害に遭っていることを親に知られるのを恐れて助けを求められず、被害が繰り返される傾向もある。そうなる前に、普段から「自分の身体は自分だけのものであること。そして、何があったとしても保護者は子供の味方だとあらかじめ伝えておいてほしい」と呼びかける。

それでも、全ての家庭に幼児期からの性教育は望めない。小学校が最後の砦だと教授は訴える。

『おしえて!くもくん』の中には、子供が楽しんで学べるような迷路も(写真=提供)

性被害防止の「最後の砦」としての学校教育

教授は、今回の文科省の動きをきっかけに、学習指導要領の見直しが進むことを期待する。「今の性教育では、子供たちは正しい知識が得られず、ネットを通じて誤った性的言動に慣らされている。まずは子供たちが性暴力の加害者・被害者になることを防ぐための知識を、この動きの中で広めていく必要がある」と訴える。さらに「思春期になる前に、性について家庭内で話してほしい」とも話す。最近は「おうち性教育はじめます」(KADOKAWA)など、保護者向けに漫画でわかりやすく性教育を伝えるものも出てきている。被害に遭った子は、自尊心を傷付けられ、被害に遭っていることを親に知られるのを恐れて助けを求められず、被害が繰り返される傾向もある。そうなる前に、普段から「自分の身体は自分だけのものであること。そして、何があったとしても保護者は子供の味方だとあらかじめ伝えておいてほしい」と呼びかける。

それでも、全ての家庭に幼児期からの性教育は望めない。小学校が最後の砦だと教授は訴える。

小笠原教授が提案する、プライベートゾーン教育案(写真=提供)

教職を目指す慶大生へ

「まず、わいせつ行為の加害者には絶対にならないこと。意外なほど子供たちは教員の求めに逆らえないことを自覚すべき。それに加えて、子供のSOSをキャッチし、適切に対処できる人になってほしい」と語りかける。残念ながら、子供の味方でいてくれる保護者ばかりではない。性虐待も深刻な問題だ。その子供たちのSOSに気付ける力を身に付けることが必要だ。

性被害防止のために私たちにできること

まず「アクティブバイスタンダー」になること。痴漢行為やその他の性被害を目撃したときに無視するのではなく、声掛けや通報などをすることが重要だ。「一人一人にできることはある。『じぶんごと』として捉えてほしい。そして、どうしたら性犯罪を食い止められるか、考えてほしい」と教授は呼びかけた。

令和2年度の「男女間における暴力に関する調査」(内閣府男女共同参画局)によると、女性の14人に1人が無理やり性交等をされる被害に遭っているにもかかわらず、6割の女性がどこにも相談していない。また、性被害の相談相手として、4人に1人が「友人・知人」と答えている。自らが被害者とならなくても、相談されることはあるかもしれない。適切な対応を学んでおくことが大切だ。

生徒にとって、絶対的な存在である先生によるわいせつ行為は、大きな精神的打撃を与える。一人でも被害者を減らすため、新法による状況改善を切に願う。

 

(加藤萌恵)

 

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