慶應塾生新聞会 三田オフィス

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《雷鳴轟く》

 

 

連載|14人がオモウコト。
テーマ「夏休み」

 

(8)
雷鳴轟く

 

雨はまだ止みそうにない。

私は今、音を立てて空から流れ落ちる雨を、

机を前に座ってぼんやりと眺めている。

 

夕方、野暮用を済ませカフェで一服しているときだった。

急に外が暗くなり、蝉が鳴くのをやめた。

咄嗟に、しまったな、と思った。

家を出た時に、空模様が怪しいぞと思った自分を思い出したのである。

ポツ、ポツと窓を打つ音が聞こえたかと思えば、

あっという間に雨は激しくなり、しまいに空は低い唸り声を上げ始めた。

 

思わぬ所で足止めを食らってしまった。

私はコーヒーを手元に、気長に雨が上がるのを待つことにした。

目の前の道路の緩やかな斜面に、川ができていることに気がつく。

 

それを見て、小学生の頃、通学路に長い坂道があったのを思い出した。

一歩足を進めるたびに地球の重力を感じるような、傾斜が急な坂で、

激しく雨が降ると決まって立派な川を作った。

その急流を上り下るのは、そこを通る小学生の楽しみだった。

私たちは長靴を脱ぎ素足になり、1日だけの川を楽しんだ。

しかし次の日になれば、間違いなく坂は坂なのである。

 

バキバキバキッ。

 

突如、耳をつんざくような雷鳴が響き渡った。

隣で楽しそうに話していた2人の女子中学生も、

思わず息を呑み、その暴力的な音にしばらく沈黙した。

 

よく考えてみれば、

傘をさしてこの土砂降りの中を歩く理由なんてなかった、と気がついた。

このあとに何か用事を控えているわけではなかった。

傘を持っていても、持っていなくても、

このカフェにあと1時間は居座っていただろう。

今年は、そういう夏だ。

 

そして、雷は夕立と共にゆっくりと去った。

雲間から陽の光が差し込み、辺りが一気に明るくなる。

コーヒーの苦味も、道路の川も消えた。蝉がまた鳴き始める。

 

自然の猛威にさらされていようとも、

私たちはその中に、必ず楽しみを見出そうとする。

 

☆ペンネーム カッコウ

☆学部学年 法学部政治学科2年

☆ひとこと 昨日、日本は処暑に入りました。「暑さ処す」、暑さが収まる時期を意味するのだと。「処処(ところどころ)暑し」だと勘違いしていました。