慶大は先月28日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、今年度春学期の授業をオンライン()で行うと発表した。当初は今月6日まで予定していた学内施設の閉鎖も、無期限で見合わせる。塾生・教職員ともに手探りの状態が続く新学期。現場の声を取材した。(報道編集長・太田直希)

※ 慶應塾生新聞会は、2020年5月号の製作を全面オンラインで実施いたしました。ご協力いただきました関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。

 

 学問の灯、絶やさない

慶大教養研究センターの公式ウェブサイトに掲載された「日吉学」受講生へのメッセージ(左)。担当教員が開講への決意を綴った

慶大教養研究センターの授業「日吉学」は、資料動画の配信やリアルタイムでの質問制度を組み合わせたオンライン授業を実施する。同センターの公式ウェブサイトでは、開講に先立って受講生へのメッセージを掲載。「このような状況だからこそ、学びの燈火を絶やすことはできない」と開講への決意を綴った。

授業のコーディネーターを務める経済学部の不破有理教授(英文学)は「東日本大震災で授業開始が遅れた時の状況と重なった。不安を抱える新入生や在校生に、学問の世界が待っているということを少しでも早く伝えたかった」とメッセージ公開の経緯を振り返る。

メッセージには、戊辰戦争下の江戸でも講義を続けた福澤諭吉のエピソードを盛り込んだ。14年まで同センターの所長も務めた不破教授は「座学だけではない新しい形の授業の在り方を模索してきた教養研究センターにとって、非常に苦しい状況。しかし、ここで学問の旗を降ろしてはならない」とオンラインでの開講を決断した。5日には初回の講義を終え「学生の熱気が、オンラインでも伝わってきた」と喜びを語った。

✔  オンライン授業
インターネットを用いて実施される授業の総称。

主要なものに「授業支援システム」「Box」などにアップロードされた資料や動画を用いて、定められた期間内に学習する「オンデマンド授業」がある。安定した通信回線を持たない塾生に配慮して、多くの授業でこの方式が取られた。

また、ウェブ会議サービスの「Zoom」「WebEx」「Google Meet」などを用いて、生配信で授業を行う「リアルタイム授業」もある。教員と塾生が相互にやり取りすることが可能で、主に少人数の授業で実施されている。

両者のメリットを柔軟に取り入れた授業も見られる。一部のオンデマンド授業では、通信量の負担が少ない「チャット」を用いて、塾生からの質問を受け付けている。また、リアルタイム授業の中には、授業後に録画映像を確認できるものもある。

 

実験・実習も自宅で

横浜市港北区の慶大矢上キャンパス。理工学部の3・4年生と大学院生が学ぶ(資料写真)

理工学部の実験科目では、各学生が実験の動画を視聴し、考察レポートを執筆する方式を取った。初回の動画を視聴した同学部3年の女子学生は「実験の手順が簡潔にまとまっており、理解しやすかった。ただ、レポート作成に必要な文献の収集に苦戦している。KOSMOSの電子ジャーナルを活用していきたい」と話した。

✔  KOSMOS
慶大メディアセンター(図書館)の蔵書管理システム。大学が契約する電子ブック・電子ジャーナルなども一括検索できる。

医学部では、通常の講義に加え、臨床実習(大学病院での実習)も遠隔で実施する。春学期の間はオンラインで症例検討を行い、病院内への塾生の立ち入りは原則として認めない方針だ。

 

「連絡が来ない」一部授業で混乱

「授業支援システム」の画面。一部の授業では、初回の授業終了時刻までに担当教員からの連絡が届かなかった

慶大は3月16日公表の方針通り、先月30日から春学期の授業を開始した。8日時点では大規模なシステム障害などは発生していないが、初週の授業では一部の科目で担当教員からの連絡が行き届かず、混乱が生じる場面もあった。

文学部2年の男子学生は、所属する専攻の選択科目を履修登録したが、初回の授業終了時刻まで、担当教員からの連絡が無かった。「他学部の友人からも似たような話を聞く。不安を感じている塾生も多いだろう」と訴える。

 

 留学生「少し心細い」

文学部3年の男子留学生は、春休みも都内の下宿先に留まった。「母国に帰れないのは寂しかったが、地方出身の日本人学生も同じ状況だろうから、共に頑張りたい」と振り返る。

オンライン授業については「聞き取れなかった部分を何度でも再生して確認できる」と評価。一方で「対面授業なら、その場で友人が助けてくれることもあったが、今はそれも難しく、少し心細い」と率直な心境を語った。

 

 新歓活動もオンラインで

慶應カメラクラブの「オンラインパート会」。カメラの使い方についての講義を生配信した(画像の一部を加工しています)

学生団体の新歓活動もオンラインでの実施が広がっている。慶大学生総合センターは先月3日から学生団体に対して課外活動の中止を要請してきたが、28日にはオンライン上での活動に限り認める方針を示した。

公認団体の慶應カメラクラブは、ウェブ会議システムの「Zoom(ズーム)」を利用した新入生との交流に取り組む。動画投稿サイト「ユーチューブ」の生配信サービスを用いた撮影技術の講習会も実施した。

また同会では、例年通りの活動実施が困難な状況を踏まえ、会費の減額を決定した。経済的事情で会費の支払いが難しい塾生には、延納も認める予定。

代表の秋山裕祐さん(商3)は「アルバイト収入や仕送りが減少した学生にも、課外活動の機会を確保したい。当面はオンラインでの活動が続くが、引き続き新入生との交流を図っていく」と想いを語った。

 

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